急性虚血性脳卒中30日院内死亡リスクモデルは、脳卒中の重症度を示す米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を盛り込むことで、予測能が有意に改善することが明らかにされた。これまで同スケールの有無によるモデル予測能についてはほとんど検討されていなかったが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のGregg C. Fonarow氏らが、13万人弱の患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月18日号で発表した。
発症30日院内死亡率は5.8%
研究グループは、2003年4月~2009年12月にかけて急性虚血性脳卒中を発症し、全米782ヵ所の病院で治療を受けた12万7,950人について追跡した。院内30日死亡の予測モデルにNIHSS(神経学的検査指標15項目、スコア0~42で高いほど脳卒中の重症度が高い)を盛り込むことで、モデルの予測能が改善するかどうかを分析した。
被験者は、メディケアの出来高払い制プランの加入高齢者。NIHSS平均値は8.23(標準偏差8.11)(中央値5、範囲2~12)だった。
発症30日以内に死亡したのは1万8,186人(14.5%)で、うち発症時入院中の死亡は7,430人(5.8%)だった。
モデルへのNIHSSスコア追加で、ネット再分類改善度は93.1%
結果、NIHSSスコアを盛り込まない30日院内死亡モデルのC統計量は0.772(95%信頼区間:0.769~0.776)だったのに対し、盛り込んだ同モデルのC統計量は0.864(同:0.861~0.867)で識別能は有意に高かった(p<0.001)。
NIHSSスコアを盛り込まない30日院内死亡モデルを用いて患者アウトカムが上位20%と下位20%に分類された病院のうち、NIHSSスコアを入れた同モデルで別の分類に入った病院の割合は26.3%に上った。NIHSSスコアを盛り込まない同モデルで、アウトカムが「期待より悪い」と評価された病院の57.7%が、NIHSSスコアを入れた同モデルによって「期待と同等」に再分類された。
30日院内死亡モデルにNIHSSスコアを盛り込むことによる、ネット再分類改善度は93.1%(同:91.6~94.6、p<0.001)、統合識別能改善度は15.0%(同:14.6~15.3、p<0.001)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)