糖尿病予備軍および早期糖尿病患者1万2,500例超を長期追跡した「ORIGIN」試験グループは、インスリン グラルギン(商品名:ランタス)による6年超にわたる空腹時血糖正常化の心血管およびその他のアウトカムへの影響について発表した。心血管アウトカムとがんへの影響は中立的であったこと、低血糖エピソード増とわずかな体重増は認められたが糖尿病の新規発症は減少したという。結果を踏まえて研究グループは、さらに血糖正常化の微細血管などへの影響について検討する必要があるが、現段階ではインスリン グラルギンの標準療法としての位置づけ変更を支持しないとする見解を示している。NEJM誌7月26日号(オンライン版2012年6月11日号)掲載より。
中央値6.2年追跡、インスリン グラルギン治療と標準治療を比較
ORIGIN(Outcome Reduction with an Initial Glargine Intervention)はインスリン グラルギン(商品名:ランタス)治療と標準的治療が心血管系イベントの発生に及ぼす影響を比較するとともに、長期のn-3脂肪酸サプリメント服用についても検討した2×2要因二重盲検無作為化臨床試験。
被験者は、40ヵ国573施設から登録され、中央値6.2年(範囲:5.8~6.7)追跡された。心血管イベントが高リスク(ベースラインで59%が心筋梗塞、脳卒中、または血行再建術実施)の、空腹時血糖異常、耐糖能異常あるいは2型糖尿病を有する患者で、インスリン グラルギン[目標空腹時血糖値≦95mg/dL(5.3mmol/L)]または標準治療のいずれかを受けるように無作為化された。また、毎日n-3脂肪酸エチルエステル900mg以上(90%超)を含有する1gカプセルのサプリメントまたはプラセボを服用する群に無作為化され追跡された。
空腹時血糖正常化の心血管イベントへの影響についての解析は、被験者1万2,537例(平均63.5歳)で、インスリン グラルギン群6,264例、標準治療群6,273例。共通主要アウトカムは、第1は非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中または心血管死とし、第2は第1のイベントに加えて血行再建または心不全による入院とした。このほか、微小血管アウトカム、糖尿病の発症、低血糖の発生、体重、がんについても両群間で比較した。
心血管アウトカム、がんの発生に有意差認められず、2型糖尿病の新規発症は有意に減少
結果、両群の心血管アウトカムの発生率は同程度であった。第1共通主要アウトカムの発生率は100人・年当たり、インスリン グラルギン群2.94、標準治療群2.85で(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.94、~1.11、p=0.63)、第2共通主要アウトカムは5.52、5.28(同:1.04、0.97~1.11、p=0.27)だった。
2型糖尿病の新規発症については、治療中止後3ヵ月時点での発生が、インスリン グラルギン群30%に対し、標準治療群は35%だった(オッズ比:0.80、95%信頼区間:0.64~1.00、p=0.05)。
重症低血糖の発生率は100人・年当たり、インスリン グラルギン群1.00、標準治療群0.31。平均体重の変化は、インスリン グラルギン群が1.6kg増加、標準治療群は0.5kg減少だった。
がんの発生については、両群間に有意差は認められなかった。発生率は100人・年当たり両群ともに1.32だった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.88~1.13、p=0.97)。
(武藤まき:医療ライター)