年齢・体温別の呼吸数の新基準で、発熱小児の下気道感染症を検出

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/10

 

新たに開発された年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図に基づく呼吸数の新基準を用いれば、既存の呼吸数閾値よりも高い検出能で発熱小児における下気道感染症(LRTI)の診断が可能なことが、オランダErasmus MC-Sophia小児病院のR G Nijman氏らの検討で示された。呼吸数は、LRTIの重要な予測因子であり、呼吸器系の基礎疾患や発熱の影響を受ける。既存の頻呼吸の閾値は発熱との関連はほとんど考慮されていないという。BMJ誌2012年7月28日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。

パーセンタイル図を開発し、診断能を前向きに検証
研究グループは、発熱のみられる小児におけるLRTIの予測法として、年齢と体温別の呼吸数の基準値とパーセンタイル図を開発し、その検出能を評価するプロスペクティブな観察試験を実施した。

2006~2008年に、Erasmus MC-Sophia小児病院(ロッテルダム)小児救急診療部を受診した生後1ヵ月から16歳未満の発熱のみられる小児1,555例を導出集団(derivation population)とした。第1検証集団(validation population)は、2005~2006年にコベントリー大学病院(英国、コベントリー)を受診した発熱小児360例、第2検証集団は2003~2005年にErasmus MC-Sophia小児病院を受診した発熱小児311例であった。

導出集団で呼吸数のパーセンタイル図を作成し、体温ごとの呼吸数の50、75、90、97パーセンタイル値を算出した。多変量回帰分析を行って呼吸数、年齢、体温の関連を調べた。

得られた結果の妥当性を確認するために、検証集団で呼吸数パーセンタイル図の診断能の評価を行った。肺炎性LRTI(胸部X線検査で確定)、非肺炎性LRTI、非LRTIと診断された小児の呼吸数パーセンタイルを算出した。年齢、呼吸数(回/分)、体温とLRTIの関連を解析した。

肺炎性と非肺炎性LRTIの鑑別はできない
全体として、年齢と体温で補正すると、体温が1℃上昇するごとに呼吸数が2.2回/分増加した。年齢、体温、呼吸数の間に交互作用は認めなかった。

呼吸数の97パーセンタイルをカットオフ値とした場合の年齢と体温に基づくLRTIの診断能(特異度:0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96、陽性尤度比:3.66、95%CI:2.34~5.73)は、既存のAPLS(Advanced Pediatrics Life Support)ガイドラインの呼吸数閾値の診断能(特異度:0.53、95%CI:0.48~0.57、陽性尤度比:1.59、95%CI:1.41~1.80)よりも優れていた。

一方、呼吸数パーセンタイルのカットオフ値では、肺炎性LRTIと非肺炎性LRTIの鑑別はできなかった。

著者は、「年齢と体温別の呼吸数パーセンタイル図により、発熱小児における呼吸数の新たな基準値が示された。97パーセンタイルをカットオフ値とすると、LRTIの検出能が既存の呼吸数閾値よりも良好だった」と結論している。

(菅野守:医学ライター)