慢性心不全患者に対し、有酸素運動指導を行うことで、うつ症状が有意に軽減することが示された。また長期の総死亡・入院リスクについても、わずかな低下が認められた。米国・デューク大学メディカルセンターのJames A. Blumenthal氏らが、約2,300人について行った無作為化比較試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月1日号で発表した。心不全患者でうつ症状が認められるのはその4割にも上り、またうつ症状がアウトカムの増悪につながることが、これまでの研究でわかっているという。
運動群は週90~120分の有酸素運動
研究グループは、2003年4月~2007年2月にかけて、米国、カナダ、フランスの82ヵ所の医療機関を通じて、2,322人の心不全患者について無作為化比較試験を開始した。被験者は、左室駆出率35%以下、NYHA心機能分類クラスI~IVだった。ベック抑うつ評価尺度II(BDI-II)で、うつ状態の評価も行い、同スコアが14以上を臨床的にうつ状態だとした。
試験は被験者を無作為に2群に分け、一方の群には、1~3ヵ月後まで指導者による有酸素運動を90分/週、4~12ヵ月後まで自宅で週120分以上の運動を行った。もう一方の対照群には、患者教育とガイドラインに沿った心不全治療を行った。
主要アウトカムは、全死因死亡とあらゆる入院の統合イベント、および3ヵ月、12ヵ月後のBDI-IIスコアとした。
3ヵ月、12ヵ月後のうつスコア、運動群で有意に低値
追跡期間の中央値は30ヵ月だった。またBDI-IIスコアの試験開始時の中央値は8で、同14以上は被験者の28%だった。
追跡期間中の死亡または入院は、対照群が789人(68%)だったのに対し、運動群では759人(66%)と1割程度低かった(ハザード比:0.89、95%信頼区間:0.81~0.99、p=0.03)。
また3ヵ月後のBDI-IIスコア平均値は、対照群が9.70に対し運動群が8.95と、0.75ポイント低かった(p=0.002)。12ヵ月後の同スコア平均値も、対照群が9.54に対し運動群が8.86と、0.68ポイント低かった(p=0.01)。
Blumenthal氏らは「ガイドラインに沿った通常ケアと比較して、有酸素運動指導を行うことはうつ症状をわずかだが軽減した。しかし、その臨床的有意性は不明である」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)