急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンなど)の7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが、スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のTorsten Sandberg氏らの検討で示された。尿路感染症の最大の原因は腸内細菌の抗菌薬に対する耐性化であり、対策としては投与期間の短縮など、抗菌薬の消費量の抑制が重要だという。急性腎盂腎炎は成人女性に高頻度にみられる感染症だが、その治療法に関する対照比較試験は少なく、抗菌薬治療の至適投与期間は確立されていない。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。
至適投与期間を前向き無作為化非劣性試験で検討
研究グループは、急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン治療における7日間投与と14日間投与の有効性をプロスペクティブに比較するプラセボ対照無作為化非劣性試験を実施した。
対象は、スウェーデンの21の感染症医療施設で急性腎盂腎炎と推定診断された18歳以上の妊娠していない女性であった。これらの患者が、シプロフロキサシン(500mg×2回/日)を7日間投与する群あるいは14日間投与する群に無作為に割り付けられた。
最初の1週間は非盲検下に全例に同様の治療が行われ、2週目は二重盲検下にシプロフロキサシン(500mg×2回/日)あるいはプラセボが継続投与された。患者、介護者、担当医、試験運営センター職員には治療割り付け情報がマスクされた。
主要評価項目は治療終了後の短期的(10~14日)な臨床治癒率、副次的評価項目は長期的(42~63日)な累積治癒率とし、per-protocol解析を行った。治癒は、臨床的かつ細菌学的な治癒が達成された場合と定義した。
短期的臨床治癒率:97% vs 96%、長期的累積治癒率:93% vs 93%
2006年2月1日~2008年12月31日までに248例登録され、7日間投与群に126例が、14日間投与群には122例が割り付けられた。それぞれ73例(平均年齢46歳、27~62歳)、83例(同:41歳、23~58歳)が解析の対象となった。
短期的臨床治癒率は、7日間投与群が97%(71/73例)、14日間投与群は96%(80/83例)で、短期投与の長期投与に対する非劣性が確認された(群間差:-0.9%、95%信頼区間:-6.5~4.8、非劣性検定:p=0.004)。長期的累積治癒率は両群とも93%(7日間投与群:68/73例、14日間投与群:78/84例)で、これも同様の非劣性が示された(群間差:-0.3%、95%信頼区間:-7.4~7.2、非劣性検定:p=0.015)。
両群とも忍容性は良好であった。7日間投与群の1例が筋肉痛で治療を中止し、14日間投与群ではそう痒性発疹による治療中止が1例認められた。最初の1週間の治療後にシプロフロキサシン関連の有害事象を発現した患者は、7日間投与群が5%(4/86例)、14日間投与群は6%(6/93例)だった。粘膜カンジダ感染症は7日間投与群ではみられなかったが、14日間投与群では5例に認めた(p=0.036)。
著者は、「高齢女性や比較的重篤な病態の女性を含む急性腎盂腎炎患者において、シプロフロキサシンの7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが示された」と結論し、「薬剤耐性が増加傾向にある現在、短期的抗菌薬療法は好ましい治療法といえよう」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)