活動性関節リウマチに対する新規経口薬のトファシチニブ単独療法

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/22

 

 活動性関節リウマチ患者に対し、新規経口薬のトファシチニブ(開発コードCP-690, 550、本邦では承認申請中)の単剤療法は、プラセボと比較して関節リウマチの徴候・症状を軽減し身体機能を改善することが、米国・Metroplex Clinical Research CenterのRoy Fleischmann氏らによる第3相無作為化試験の結果で示された。NEJM誌2012年8月9日号掲載の報告。トファシチニブは、関節リウマチの標的免疫調節薬および疾患修飾薬として研究されている経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、炎症性サイトカインなどを対象とする現在の関節リウマチ薬とは異なる新しい作用機序の経口薬である。

トファシチニブ単独療法(5mg、10mg)群とプラセボ群の3ヵ月時点の有効性を評価
試験は611例の患者を対象とし、6ヵ月治療コースで検討する第3相二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験だった。治療コースは、(1)トファシチニブ5mgを1日2回投与群、(2)トファシチニブ10mgを1日2回投与群、(3)プラセボ投与3ヵ月+トファシチニブ5mg 1日2回投与を3ヵ月群、(4)プラセボ投与3ヵ月+トファシチニブ10mg 1日2回投与を3ヵ月群で、4対4対1対1の割合で無作為化された。

被験者は、米国リウマチ学会基準(ACR)で活動性関節リウマチと判定され、1種類以上の非生物学的または生物学的な疾患修飾薬で効果不十分であるなどを適格条件とした。

主要有効性エンドポイントは、3ヵ月時点での3つの評価で、トファシチニブ単独療法(5mg、10mg)群とプラセボ群とを比較して行われた。1つはACRが20%以上改善した患者(ACR 20)の割合で、2つ目が健康評価質問票-機能障害指数(HAQ-DI、スコア範囲0~3で高スコアほど機能障害が大きい)のベースラインからのスコアの変化、3つ目が(赤血球沈降速度に基づく28関節疾患活動性[DAS28-4(ESR)、スコア範囲0~9.4で高スコアほど疾患活動性が高い]のスコアが寛解達成基準の2.6未満となった患者の割合だった。

ACR 20、HAQ-DIスコアは単独群が有意
結果、ACR 20の基準を満たした患者の割合は、プラセボ群よりもトファシチニブ単独療法群が高率だった(トファシチニブ5mg群59.8%、トファシチニブ10mg群65.7%、プラセボ両複合群26.7%、各単独群とプラセボ群の比較はいずれもp<0.001)。

HAQ-DIスコアのベースラインからの減少も、プラセボ群よりもトファシチニブ単独療法群のほうが大きかった(同:-0.50、-0.57、-0.19ポイント、p<0.001)。

DAS28-4(ESR)2.6未満に達した患者の割合は、プラセボ群よりもトファシチニブ単独療法群で高率だったが有意ではなかった(同:5.6%、8.7%、4.4%、それぞれの比較p=0.62、p=0.10)。

トファシチニブ投与群では6例で重篤な感染症が発生した。頻度の高い有害事象は頭痛と上気道感染症だった。また、トファシチニブ治療はLDL値の上昇と好中球数の減少に関連していた。

(朝田哲明:医療ライター)

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コメンテーター : 杉原 毅彦( すぎはら たかひこ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 膠原病・リウマチ科 医長

J-CLEAR評議員