閉経後女性に対するホルモン補充療法は心血管系イベントを、かつて考えられていたのとは逆に増加させることが、英、豪、ニュージーランド3国の共同研究であるWISDOMの結果、明らかになり、2004年に米国で報告されたWomen's Health Initiative(WHI)スタディの結果が再確認される形となった。BMJ誌のHPにて早期公開された(オンライン版7月11日号、本誌8月4日号掲載)。
閉経後平均15年経過した女性を対象
対象とされたのは50~69歳で心血管系疾患の既往がない閉経後女性。「エストロゲン+プロゲスチン群(2,196例)vs プラセボ群(2,189例)」と「エストロゲン+プロゲンスチン併用群(815例) vs エストロゲン単独群(826例)に無作為化された。エストロゲンの用量はWHIスタディと同一、またプロゲスチンはWHIスタディと同量から2倍量が用いられた。
平均年齢は62.8歳、閉経からの平均年数は15年だった。
短期間追跡にも関わらずホルモン補充療法で心血管系イベントが有意に増加
WHI スタディの結果が公表されたため、本試験は早期中止となり、追跡期間中央値は11.9ヵ月(7.1~19.6ヵ月)。このような短期間の追跡にもかかわらず心血管系イベントは「エストロゲン+プロゲスチン群」で「プラセボ群」に比べ有意に多かった(26.9例/1,000人年 vs 0例/1,000人年、p=0.016)。同様に静脈血栓症も有意かつ著明(相対リスク:7.36、95%信頼区間:2.20-24.60)に増加していた。またホルモン補充療法による骨折の有意な減少は観察されなかった。
なお「エストロゲン単独群」では「エストロゲン+プロゲスチン併用群」に比べ、心血管系イベントと静脈血栓症が減少する傾向が見られた。
筆者らは閉経後長期間経過した女性に対するホルモン補充療法が心血管系イベントと静脈血栓症のリスクを増加させることを認める一方、より若年の更年期から開始するホルモン補充療法の有用性は否定されていないと述べている。
(宇津貴史:医学レポーター)