外傷後ストレス障害(PTSD)で薬物依存を有する患者に対して、PTSDの認知行動療法の1つである持続エクスポージャー法(prolonged exposure therapy:PE)を用いたPTSD・薬物依存の併用治療は、薬物依存の重症度を増大することなくPTSD症状をより大きく改善することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKatherine L. Mills氏らが、103人の患者について行った無作為化対照試験の結果報告したもので、JAMA誌2012年8月15日号で発表した。薬物依存を有するPTSD患者は少なくないが、そうした患者に対するPE法の適切性については明らかでなかったという。
治療9ヵ月後に、PTSDと薬物依存症の重症度変化を評価
研究グループは2007~2009年に、オーストラリア・シドニーの医療機関で、精神疾患の診断基準「DSM-IV-TR」によりPTSDと薬物依存症の診断を受けた患者103人について試験を開始した。被験者を無作為に2群に分け、一方には、PE法によるPTSDと薬物依存症の併用治療(COPE)と、薬物依存症に対する通常の治療を行った。もう一方の対照群には、薬物依存症に対する通常の治療のみを行った。
主要エンドポイントは、治療開始9ヵ月後の臨床診断面接尺度(CAPS)によるPTSD重症度の変化と、国際比較診断用構造化面接(CIDI)による薬物依存症の重症度の変化だった。CAPSでは15ポイント、CIDIでは1ポイント以上の変化を臨床的に有意な変化とした。
PTSD重症度はCOPE群でより大きく改善、薬物依存症重症度改善幅は両群で同等
その結果、両群ともに、試験開始9ヵ月後までにPTSD重症度の有意な改善が認められた。CAPS変化の平均値は、COPE群が-38.24(95%信頼区間:-47.93~-28.54)、対照群は-22.14(同:-30.33~-13.95)だった。両群の平均格差は-16.09(同:-29.00~-3.19)で、COPE群のPTSD重症度改善幅が対照群に比べて有意に大きかった。
薬物依存症の重症度についても、両群ともに9ヵ月間で有意な改善が認められたが、その改善幅は、COPE群が0.43に対し対照群が0.52と、両群に有意な差は認められなかった(罹患率比:0.85、同:0.60~1.21)。
その他、薬物使用、うつ症状、不安症状の変化幅についても、両群で有意な差は認められなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)