DAISYと呼ばれる軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法は、患者の認知症の進行、うつ状態、QOLおよび介護者のうつ状態、QOLを改善しないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のF B Waldorff氏らが行ったDAISY試験で示された。中等度~高度アルツハイマー病患者とその介護者に対するカウンセリングや心理社会的介入により、患者の病態が改善する可能性が示唆されている。しかし、患者と介護者双方への介入について検討した試験は少なく、軽度の患者を対象とした試験はこれまでなかったという。BMJ誌2012年8月18日号(オンライン版2012年7月17日号)掲載の報告。
軽度患者・介護者への介入の効果を無作為化試験で評価
DAISY(Danish Alzheimer Intervention Study)試験は、軽度アルツハイマー病の外来患者とその介護者に対する、早期の社会心理的なカウンセリングおよび支援プログラムによる介入の有効性を評価する多施設共同無作為化試験。
デンマークの5つの地域のプライマリ・ケア施設および認知症外来を受診した330組の軽度アルツハイマー病患者と介護者が、通常の支援のみを受ける群あるいは通常支援に加えDAISY介入(多角的で準個別化されたカウンセリング、教育、支援)を受ける群に無作為に割り付けられた。評価者には割り付け情報がマスクされた。
主要評価項目は、患者の認知症の進行度(mini mental state examination:MMSE)、うつ状態(Cornell scale for depression in dementia:CSDD)、QOL(European quality of life visual analogue scale:EQ-VAS)スコア、および介護者のうつ状態(geriatric depression scale:GDS)、QOL(EQ-VAS)スコアのベースラインから12ヵ月後までの変化とした。
患者のうつ状態は改善の傾向に
通常支援単独群に167組(患者:平均年齢75.9歳、女性55%、介護者:66.5歳、66.5%)、DAISY介入追加群には163組(患者:76.5歳、53%、介護者:65.5歳、66.9%)が割り付けられた。12ヵ月後に解析の対象となったのはそれぞれ145組、131組であった。
多重検定の補正法としてBenjamini-Hochberg法を用い、偽発見率(false discovery rate)5%を有意水準とし、p<0.0005の場合に有意差ありとした。
結果、1年後の評価において通常支援単独群とDAISY介入追加群の間には、主要評価項目、副次的評価項目のいずれにおいても有意な差は認めなかった。しかし、DAISY介入追加群では患者のCSDDのみ良好な傾向がみられた(補正前:p=0.0146、補正後:p=0.0103)。
著者は、「軽度アルツハイマー病患者とその介護者に対する多角的で準個別化された介入法であるDAISYによる1年間の介入は、認知症の進行、うつ状態、QOLを改善しなかった」と結論し、「小さいながらも、うつ状態について改善効果を認めたため、うつ状態を併発するアルツハイマー病患者に焦点を当てた検討の余地があるかもしれない」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)