高齢者で心血管核磁気共鳴画像法(CMR)により無症候性心筋梗塞が検出された人は、症候性心筋梗塞患者よりも死亡率が約1.5倍高いことが明らかにされた。一方で心電図(ECG)により無症候性心筋梗塞が検出された人では、死亡率の増大が認められなかった。米国国立衛生研究所(NIH)のErik B. Schelbert氏らが、約900人について行った地域ベースのコホート試験から報告したもので、JAMA誌2012年9月5日号で発表した。無症候性心筋梗塞の検出は予後予測にとって重要だが、ECGでは同検出能に限界があるとされていた。
900人超について、心筋梗塞発症率を調査、死亡率を比較
研究グループは、アイスランドに居住する1907~1935年出生の人が参加する地域無作為抽出コホート「AGES Reykjavik Study」(被験者数5,764人)の中から、2004~2007年に登録された936人(67~93歳)を2011年9月まで追跡した。
心筋梗塞発症率と死亡率について、症状があり入院記録や診療録が確認された患者群と、無症状でCMRまたはECGで検出された患者群について、それぞれ比較した。
被験者の平均年齢は76歳、うち52%が女性だった。
CMRによる無症候性心筋梗塞検出は、ECG検出よりも有意に高率
結果、症候性心筋梗塞が確認できたのは91人(9.7%、95%CI:8~12)だった。無症候性心筋梗塞は、CMR検出群は157人(17%、同:14~19)で、ECG検出群46人(5%、同:4~6)よりも有意に高率だった(p<0.001)。
被験者のうち糖尿病を有していた337人についても、CMR無症候性心筋梗塞検出群は21%(同:17~26)で、ECG同検出群の4%(同:2~7)に比べ、有意に高率だった(p<0.001)。
追跡期間中央値6.4年の間の死亡率は、症候性心筋梗塞群が33%、無症候性心筋梗塞群が28%で、心筋梗塞の認められない人の17%に比べ、いずれも高率だった。CMRで検出された無症候性心筋梗塞は、アテローム硬化症リスク因子、冠動脈カルシウム、冠動脈血行再建術、末梢血管疾患と関連していた。
CMR無症候性心筋梗塞検出群は、症候性心筋梗塞群と比べ、死亡率に関するリスク層別化の改善がみられた(純再分類改善度:0.34)。年齢、性別、糖尿病の有無、症候性心筋梗塞で補正後も、CMR無症候性心筋梗塞検出群の死亡率増大は保持され(ハザード比:1.45、絶対リスク増加:8%)、リスク層別化の有意な改善が認められた(純再分類改善度:0.16)。
一方、ECG無症候性心筋梗塞検出群は、死亡率増大やリスク層別化の改善は認められなかった(ハザード比:0.88、純再分類改善度:-0.05)。
なお、症候性心筋梗塞群と比べ、CMR無症候性心筋梗塞検出群は、スタチンを始めとする薬物療法を行っている頻度が低かった(36%対73%、p<0.001)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)