これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。
平均年齢81.5歳、血圧140/80mmHgの973例が対象
BAFTA スタディの対象は一般医を受診している75歳以上のAF患者973例(平均年齢81.5歳)。ワルファリン(目標INR:2~3)群(488例)とアスピリン75mg/日群(485例)に無作為化され、オープンラベルで追跡され、イベント評価は割り付けをブラインドされた研究者が行なった。両群とも約 40%がワルファリンを服用していたが試験薬以外は服用を中止した。42%が服用していたアスピリンも同様だった。
試験開始時の血圧は約140/80mmHg、収縮期血圧が160mmHgを超えていたのはワルファリン群13%、アスピリン群16%だった。
ワルファリン群に出血性合併症増加なし
平均2.7年間の追跡期間後、1次評価項目である「脳卒中死、後遺症を伴う脳卒中、その他の脳出血、確定診断のついた脳塞栓症」発生頻度はワルファリン群 1.8%/年(24件)、アスピリン群3.8%/年(48例)で、ワルファリン群において相対的に52%の有意(p=0.0027)な減少が認められた。年齢、性別等のサブグループ別に比較しても、ワルファリン群で増加傾向の見られたグループはなかった。
一方、ワルファリン群で懸念されていた脳出血は、「死亡・後遺症を伴う脳出血」発生率が0.5%/年でアスピリン群の0.4%/年と同等(p=0.83)、また「その他の脳出血」も発生率はワルファリン群0.2%/年、アスピリン群0.1%/年と差はなかった(p=0.65)。
筆者らはこれらより、高齢者AFに対する抗凝固療法の有用性は過小評価されているのではないかと主張する。しかし本試験で用いられたアスピリン75mg/日という用量はAFASAK試験においてすでに、虚血性脳イベント予防作用がプラセボと同等だと明らかになっている。
(宇津貴史:医学レポーター)