CTによって検出される肺動脈拡張(PA:A比>1)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)重度増悪のリスク因子であることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のJ. Michael Wells氏らによる多施設共同観察試験の結果、明らかにされた。COPDの増悪は、肺機能の急激な低下および死亡と関連し、それらイベントリスクのある、とくに入院を要するような患者を同定することは重要とされる。急性増悪の予測として重度肺高血圧症があるが、これは進行したCOPDの重大な合併症である。一方で、肺血管の異常はCOPD早期に発生する。そこで研究グループは、CTで検出した肺血管疾患とCOPDの重度増悪との関連について検討した。NEJM誌2012年9月6日号(オンライン版2012年9月3日号)掲載報告より。
PA:A比>1と重度増悪入院歴との関連などを検証
研究グループは、現在および元喫煙者のCOPD患者を米国内21医療機関から登録して、多施設共同観察試験を行った。被験者は、GOLDステージII~IVの3,690例が登録され、そのうち3,464例(94%)からCTスキャンデータを入手できた。被験者を、CT計測によるPA:A比(肺血管拡張:肺動脈径の大動脈径に対する比率)で、≦1の群(2,645例)と>1群(819例)に分類した。
PA:A比>1と重度増悪による入院歴との関連について調べ、また患者コホート、外部検証コホートを長期に追跡しこれらイベントの予測に対する同比の有効性について検証した。増悪の既知のリスク因子は調整し検討された。
検討したすべての変数の中でPA:A比>1が最も強い関連
多変量ロジスティック回帰分析の結果、試験登録時のPA:A比>1と重度増悪歴の有意な関連が認められた(オッズ比:4.78、95%信頼区間:3.43~6.65、p<0.001)。
PA:A比>1は、試験コホートでも(同:3.44、2.78~4.25、p<0.001)、外部検証コホートでも(同:2.80、2.11~3.71、p<0.001)、将来重度増悪リスク増大の独立因子だった。
両コホートとも、検討したすべての変数の中で、PA:A比>1が最も強い重度増悪との関連因子だった。
(武藤まき:医療ライター)