障害児は暴力を受けるリスクが高い?:約1万8,000人のメタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2012/09/20

 

 障害児は非障害児に比べ暴力の犠牲になる可能性が高いことが、英国・リバプール・ジョン・ムーアズ大学のLisa Jones氏らの調査で示唆された。ただし、このメタ解析では各試験結果に顕著な異質性を認めたため結果の妥当性には疑問が残るという。中等度~重度の障害を持つ子どもは世界で9,300万人を下らず、障害児は非障害児に比べ暴力の犠牲となるリスクが高いという。効果的な予防プログラム開発の初期段階として、信頼性の高い評価基準の策定が必須とされる。Lancet誌2012年9月8日号(オンライン版2012年7月12日号)掲載の報告。

障害児に対する暴力の発生率、リスクをメタ解析で評価
研究グループは、障害児に対する暴力の発生状況とそのリスクのエビデンスを統合するために系統的レビューとメタ解析を行った。

12のデータベースを検索して、1990年1月1日~2010年8月17日までに報告された断面研究、症例対照研究、コホート研究を同定した。対象は、18歳以下の障害児に対する暴力の発生率および非障害児との比較で障害児が暴力を受けるリスクを評価した試験とした。

発生率、リスクともに大きな異質性を確認
17件の試験が選出された(断面研究15件、コホート研究2件)。暴力の発生率とリスクの評価を行った試験は10件、発生率のみを検討した試験が6件、リスクのみの検討を行った試験が1件だった。全体で1万8,374人の障害児がメタ解析の対象となった。

複合的な暴力の推定発生率は26.7%(95%信頼区間[CI]:13.8~42.1)、身体的暴力は20.4%(同:13.4~28.5)、性的暴力は13.7%(同:9.2~18.9)、精神的虐待は18.1%(同:11.5~25.8)、ネグレクトが9.5%(同:2.6~20.1)であった。一方、これらの推定発生率のI2統計量は、それぞれ98.9%(同:98.7~99.1)、96.8%(同:95.9~97.4)、98.3%(同:98.1~98.5)、94.7%(同:91.6~96.3)、98.4%(同:98.0~98.7)であり、顕著な異質性が認められた。

非障害児との比較における推定リスクのオッズ比は、複合的暴力が3.68(95%CI:2.56~5.29)、身体的暴力が3.56(同:2.80~4.52)、性的暴力が2.88(同:2.24~3.69)、精神的虐待が4.36(同:2.42~7.87)、ネグレクトが4.56(同:3.23~6.43)だった。また、I2統計量はそれぞれ91.8%(同:87.7~94.1)、50.6%(0~73.0)、86.9%(78.8~90.9)、94.4%(91.4~96.0)、73.8%(27.7~86.0)と、やはり大きな異質性が確認された。

試験間の推定値のばらつきは、試験の背景因子の解析では一貫性のある説明はつかなかった。

著者は、「障害児は非障害児に比べ暴力の犠牲になる可能性が高いことが示唆された」と結論する一方で、「持続的で強固なエビデンスが得られなかったのは、よくデザインされた試験がなく、障害や暴力の測定基準が不完全で、障害が暴力によって生じた可能性の評価が不十分などの問題が原因と考えられる。今後、質の高い疫学調査を行う必要がある」と考察している。

(菅野守:医学ライター)