現在、フェニルケトン尿症における精神遅滞の予防法としては、早期の厳格な食事療法があるのみである。最近、新たな治療アプローチとして、テトラヒドロビオプテリン(BH4)あるいはその生物学的活性合成体であるサプロプテリン(6R-BH4)によるフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の活性化の増強が注目されている。
アメリカ・ボストン小児病院のHarvey L. Levy氏らは、フェニルケトン尿症におけるサプロプテリンの血中フェニルアラニン濃度低下作用について検討するために、プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。8月11日付Lancet誌掲載の報告から。
1年間に欧米の30施設に89例を登録
2005 年3月~2006年2月の間に欧米の30施設に89例のフェニルケトン尿症患者が登録され、サプロプテリン群(10mg/kg/日、6週間)に42例が、プラセボ群には47例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は6週後の血中フェニルアラニン濃度のベースラインからの平均変化量。
対象の平均年齢は20歳であった。88例が少なくとも1回の投与を受け、87例が6週間の治療を完遂した。ベースラインにおける血中フェニルアラニン濃度は、サプロプテリン群が843μmol/L、プラセボ群が888μmol/Lであった。
サプロプテリンにより、血中フェニルアラニン濃度が有意に低下
治療6週後、サプロプテリン群の平均血中フェニルアラニン濃度は236μmol/L低下したのに対し、プラセボ群では3μmol/L上昇していた(p <0.0001)。サプロプテリン群では、治療1週後には血中フェニルアラニン濃度が約200μmol/L低下し、この低下効果は治療終了時まで持続した(p<0.0001)。
治療との関連が示唆される有害事象がサプロプテリン群の23%、プラセボ群の20%に認められ(p=0.80)、最も頻度の高い有害事象は上気道感染症であった。
Levy 氏は、「フェニルケトン尿症に対する6週間のサプロプテリン治療は有効かつ安全」と結論、「BH4に反応するフェニルケトン尿症患者においては、サプロプテリンによるフェニルアラニン低下療法を低フェニルアラニン食の補助療法として使用可能であり、症例によっては食事療法からの完全な切り替えが可能と考えられる」と指摘している。
(菅野 守:医学ライター)