公衆衛生上の重大な問題となっている院外心停止について、救命率を高めるには脳・冠血流量の確保を最優先すべきとの知見が普及しつつある。米国アリゾナ州スコッツデールにあるメイヨー・クリニック救急医療部門のBentley J. Bobrow氏らは、院外心停止患者の生存率が、従来の救急医療(EMS)プロトコルに代わる中断最小化心肺蘇生法(MICR)を用いることで改善するかどうかについて、前向き研究を行った。JAMA誌2008年3月12日号より。
MICRと標準EMSそれぞれの生存退院率を比較
この調査は2005年1月1日から2007年11月22日にかけて、アリゾナ州の2つの都市で院外心停止を起こした患者を対象に、生存退院率の向上を確認する前向き研究として行われた。評価は、消防署の救急隊員にMICRの訓練を施す前と後とで実施された。主要評価項目は生存退院率とした。
プロトコル・コンプライアンスに関する二次解析も行われ、アリゾナ州の2つの都市と別の60の消防署で、実際にMICRを受けた患者と標準的な高度救命措置を受けた患者とが比較された。
EMS隊員へのMICRの指導内容は、連続200回の心臓マッサージ、1回の電気ショックとリズム解析、ショック後に再度200回の心臓マッサージ、脈拍チェックまたはリズム解析、エピネフリンの早期投与、気管内挿管はその後、という手順による。
MICRを受けた患者の生存退院率は有意に高かった
2都市の患者は886例で、MICR訓練前の生存退院率は1.8%(4/218)だったが、MICR訓練後は5.4%(36/668)まで増加していた(オッズ比:3.0、95%信頼区間:1.1~8.9)。
心停止および心室細動患者は174例で、生存率は、MICR前は4.7%(2/43)だったが、MICR訓練後は17.6%(23/131)まで増加していた(同8.6、1.8~42.0)。
心停止患者2,460例に関するMICRプロトコル・コンプライアンス解析を行った結果、MICRを受けた患者の生存率は9.1%(60/661例)で、受けなかった患者の3.8%(69/1,799例)より有意に高く(オッズ比:2.7、95%信頼区間:1.9~4.1)、心室細動患者でもほぼ同様の結果が確認された[28.4%(40/141例)対11.9%(46/387)、オッズ比:3.4、95%信頼区間:2.0~5.8)。
研究グループは「EMSに代わるプロトコルとしてMICRを実行した後、院外心停止患者の生存退院率が高くなったことは明らか」と結論。無作為試験での検証作業を提案しまとめた。