術中麻酔覚醒の防止と麻酔使用量抑制にBISが優位とは限らない

提供元:ケアネット

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公開日:2008/03/26

 

術中覚醒は、患者に長期的・潜在的・心理的影響を与えかねない重篤な合併症である。これを防ぐために、患者の脳波を処理して得られるバイスペクトラル・インデックス(BIS)が開発され、BIS値を60以下に維持すると術中覚醒の発生率が低下することが報告された。ワシントン医科大学麻酔科のMichael S. Avidan氏らは、このBISに基づくプロトコルと、呼気終末麻酔ガス(ETAG)の濃度測定に基づくプロトコルのどちらが優位かを確認する臨床試験を実施。結果がNEJM誌2008年3月13日号にて掲載されている。

患者2,000例をBISとETAGに分け術後3回評価




研究では患者2,000例を無作為に、BISを指標とする麻酔(BIS目標範囲:40~60)と、ETAGを指標とする麻酔(ETAG目標範囲:0.7~1.3MAC)に割り付け(MAC;最小肺胞内濃度)、手術後に抜管後0~24時間と同24~72時間、同30日の計3回、術中麻酔覚醒について評価された。

指標数値が目標範囲内でも術中麻酔覚醒が発生




BIS群967例とETAG群974例を評価した結果、術中麻酔覚醒は各群で2例(絶対差0%、95%信頼区間:0.56~0.57%)起こった。そのうち1例は BIS値60超、3例はETAG濃度が0.7MAC未満だった。全患者の時間平均ETAG濃度の平均(±SD)は、BIS群では0.81±0.25 MAC、ETAG群では0.82±0.23 MACだった(P=0.10、BIS群とETAG群間の差の95%信頼区間:0.01~0.04 MAC)。BISモニタリングによって術中麻酔覚醒の発生率が低下すると報告した先行研究の結果は再現されなかった。また、BISプロトコルの使用と、揮発性麻酔ガスの投与量減少との関係も示されなかった。BIS値とETAG濃度が目標範囲内にあっても、術中麻酔覚醒は起こった。

このため同氏らは「この研究結果は、標準診療の一環としてBISモニタリングの常用を支持するものではない」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)