フィブリン-3濃度、胸膜中皮腫の新たなバイオマーカーとして有効

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/25

 

 血漿中フィブリン-3濃度は、胸膜中皮腫のバイオマーカーとして有用であることが示された。胸膜中皮腫を早期に発見し個々の治療戦略を立てるため、新たなバイオマーカーが必要とされているが、米国・ニューヨーク大学Langone Medical CenterのHarvey I. Pass氏らが、血漿中と胸水中のフィブリン-3濃度を測定し、胸膜中皮腫の有無による違いなどについて調べ明らかにした。中皮腫のないアスベスト曝露者と胸膜中皮腫患者の識別が可能であったという。NEJM誌2012年10月11日号掲載より。

胸膜中皮腫に対する血漿中フィブリン-3濃度の感度・特異度を検証
研究グループは、血漿中と胸水中のフィブリン-3濃度の胸膜中皮腫に対するバイオマーカーとしての感度・特異度を調べた。2つのコホート(デトロイトコホート、ニューヨークコホート)を対象とした。

それらコホートのうち、中皮腫患者92人、がんのないアスベスト曝露者136人、中皮腫のない胸水患者93人と、コントロール群としての健康な人43人について、血漿中フィブリン-3濃度を測定した。また、中皮腫患者74人、良性胸水患者39人、中皮腫のない悪性胸水患者54人について、胸水中フィブリン-3濃度を測定した。

腫瘍組織のフィブリン-3については免疫組織学的分析を行い、血漿中・胸水中フィブリン-3濃度は、酵素結合免疫測定(ELISA)法で測定した。

血漿中フィブリン-3濃度による中皮腫スクリーニング、感度96.7%、特異度95.5%
結果、血漿中フィブリン-3濃度は、胸膜中皮腫の患者群(デトロイトコホート:平均105±7ng/mL、ニューヨークコホート平均113±8ng/mL)が、中皮腫のないアスベスト曝露者群(同:平均14±1ng/mL、平均24±1ng/mL)に比べ、有意に高濃度だった(p<0.001)。

また、胸水中フィブリン-3濃度も、胸膜中皮腫の患者群(同:平均694±37ng/mL、平均636±92ng/mL)が、中皮腫のない悪性胸水患者(同:平均212±25ng/mL、平均151±23ng/mL)に比べ、有意に高濃度だった(p<0.001)。

中皮腫のある患者とない患者に関する受診者動作特性(ROC)曲線では、血漿中フィブリン-3濃度のカットオフ値を52.8ng/mLにしたところ、感度は96.7%、特異度は95.5%だった。

初期中皮腫患者とアスベスト曝露者に関するROC曲線では、カットオフ値を46.0ng/mLにしたところ、感度は100%、特異度は94.1%だった。

研究グループは、血漿中フィブリン-3濃度は中皮腫のないアスベスト曝露者と中皮腫患者の識別だけでなく、胸水中フィブリン-3濃度と合わせて用いることで、他の悪性腫や良性胸水と、中皮腫胸水との識別も可能だと結論づけている。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)