ノロウイルス感染症の発生は、高齢者施設入居者の全入院および死亡の増大と有意に関連していることが報告された。米国CDCのTarak K. Trivedi氏らが、2009~2010年の米国ナーシングホームからの発生報告を後ろ向きに検証し明らかにした。脆弱な高齢者が入居する米国の高齢者施設でもノロウイルス感染症は日常的な感染症となっているという。JAMA誌2012年10月24・30日号掲載より。
発生期間中と非発生期間との入院、死亡状況を比較
研究グループは、ノロウイルス感染症発生期間の全入院および死亡率が非発生期間と比較し増大したか、また増大因子を特定することを目的に後ろ向きコホート研究を行った。
メディケア対象のオレゴン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州のナーシングホームで、2009年1月~2010年12月にCDCにノロウイルス感染症の発生あるいは疑い報告が1回以上あった施設を対象とした。
それら施設入居者の死亡と入院をメディケアデータ(Minimum Data Set:MDS)で特定した。主要評価項目は、発生期間中の非発生期間と比較した全入院および死亡の割合。ランダム効果ポアソン回帰モデルを用いて、両期間のアウトカムを季節的背景を調整した上で算出した。
日勤看護師が少ない施設では死亡が有意に増加
CDCへの報告は308施設、407件の発生が寄せられた。試験対象の2年間で、これら施設では入院6万7,730例、死亡2万6,055例が発生していた。
施設ごとの入院率は、発生期間中124.0(95%信頼区間:119.4~129.1)に対し、非発生期間中は109.5(同:108.6~110.3)で、季節的背景補正後の比率比(RR)は1.09(95%信頼区間:1.05~1.14)だった。
死亡率も同様の傾向がみられ、それぞれ53.7(同:50.6~57.0)、41.9(同:41.4~42.4)、RRは1.11(同:1.05~1.18)だった。
入院の増大は、発生直後の2週間(0週と第1週)に、死亡は最初の週(0週)に集中していた。
日勤登録看護師(RN)が少ない施設(入居者当たり<0.75)は、ノロウイルス感染症発生期間中の死亡が非発生時と比べて増大した(RR:1.26、95%信頼区間:1.14~1.40)。一方、日勤RNが多い施設ではリスク増大はみられなかった(RR:1.03、0.96~1.12)(尤度比検定p=0.007)。
入院に関しては、こうしたパターンはみられなかった。
(武藤まき:医療ライター)