大腸がん診断後のアスピリンの常用は、臨床転帰を改善することが示されていたが、その効果は、PIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸 3-キナーゼ触媒サブユニット α ポリペプチド遺伝子)変異型の有無で異なることが明らかにされた。米国・ハーバードメディカルスクールのXiaoyun Liao氏らによる報告で、アスピリン作用メカニズムの実験的エビデンスから、PIK3CA変異型とPIK3CA野生型の大腸がんでアスピリンの効果は異なるのではないかと仮説を立て検証した結果、両者の生存改善が異なることが示された。NEJM誌2012年10月25日号掲載より。
看護師健康調査などから1,000人弱を調査
研究グループは、看護師健康調査(Nurses’ Health Study)と医療従事者の追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)のデータから、大腸がんの診断を受け、アスピリン使用とPIK3CA変異の有無に関する記録のある964例について調査を行った。Cox比例ハザードモデルを用いて、死亡に関する多変量ハザード比を求め検討した。
被験者の平均年齢は68.0歳、男性は44%だった。
PIK3CA変異型大腸がん患者、大腸がん死亡リスクは0.18倍、全死亡リスクは0.54倍に
結果、PIK3CA変異のある大腸がん患者では、診断後のアスピリン常用は、より良好な大腸がん特異的生存(がん関連多変量ハザード比:0.18、95%信頼区間:0.06~0.61、p<0.001)、および全生存(同:0.54、0.31~0.94、p=0.01)と関連していた。
一方、PIK3CA野生型大腸がん患者では、診断後のアスピリン常用は、大腸がん特異的生存(同:0.96、同:0.69~1.32、p=0.76)、全生存(同:0.94、同:0.75~1.17、p=0.96)いずれとも関連がみられなかった。
この結果を踏まえて研究グループは、「大腸がんにおけるPIK3CA変異は、アスピリン補助療法効果を予測する分子バイオマーカーとして使用できる可能性が示唆される」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)