転移性肺がん・大腸がん患者の大半は、化学療法によってがんが治癒すると誤解していることが明らかになった。また誤解をしている人の割合は、医師・患者間のコミュニケーションが良いと感じている患者の方が高かった。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJane C. Weeks氏らが、約1,200人の転移がん患者を対象に行った調査で明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月24日号で発表した。転移性の肺がんや大腸がんに対する化学療法は、数週間から数ヵ月の延命効果は期待でき症状が緩和される可能性はあるが、治癒は得られない。
転移性の肺がん・大腸がんで化学療法を受けた1,193人を調査
研究グループは、がん患者についての全米前向き観察コホート試験である「Cancer Care Outcomes Research and Surveillance」(CanCORS)の参加者で、転移性の肺がんまたは大腸がんで、診断後4ヵ月時点で生存しており転移性がんに対する化学療法を受けた1,193人を対象に調査した。
化学療法によって、がんが治癒する可能性があると期待している人の割合と、そうした人の臨床的、社会経済的特徴などの関連を分析した。
誤解は、大腸がん患者のほうが肺がん患者より多い
その結果、化学療法によって、自分のがんが治癒する可能性が全くないことを理解していると回答しなかった人の割合は、肺がん患者の69%、大腸がん患者の81%に上った。
多変量ロジスティック回帰分析の結果、化学療法に対するこうした不正確な確信を持っている人の割合は、大腸がん患者の方が肺がん患者より多かった(オッズ比:1.75、95%信頼区間:1.29~2.37)。また、非白人とヒスパニック系が、非ヒスパニック系白人に比べて多く(黒人に対するオッズ比:2.93、同:1.80~4.78、ヒスパニック系に対するオッズ比:2.82、同:1.51~5.27)、医師とのコミュニケーションが非常に良いと評価した上位3分の1が、下位3分の1の人に比べて多かった(オッズ比:1.90、同:1.33~2.72)。
一方、教育レベルや身体機能の状態、意思決定における患者の役割などは、化学療法に対する不正確な確信の割合との関連はみられなかった。
結果を受けてWeeks氏は、「不治のがんに対する化学療法を受けている患者の多くは、治癒する可能性は低いことを理解していない可能性がある。そのため十分な情報に基づき、自らの意向に沿った判断ができていない可能性がある。医師は患者の満足度を犠牲にするかもしれないが、患者の理解を改善できるだろう」とまとめた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)