糖尿病患者は死亡および末期腎不全のリスクが高いが、推定糸球体濾過量(eGFR)およびアルブミン/クレアチニン比(ACR)といった腎疾患尺度でみた場合、その相対リスクは非糖尿病患者と変わらないことが明らかにされた。米国・NHLBIフラミンガム研究グループのCaroline S Fox氏らがメタ解析の結果、報告した。慢性腎臓病は、低eGFR値、高アルブミン値によって特色づけられ、それらの値と重大転帰とが関連している。そのリスクが糖尿病の有無によって影響があるのかはこれまで明らかとなっていなかった。Lancet誌2012年11月10日号(オンライン版2012年9月24日号)掲載報告より。
糖尿病有無別で死亡および末期腎不全と腎疾患尺度との関連を検討
研究グループは2011年3月~2012年6月の間に、Chronic Kidney Disease Prognosis Consortiumの基準に適合する試験を選択しメタ解析を行った。
Cox比例ハザードモデルを用いて、糖尿病有無別に死亡および末期腎不全と、eGFRおよびアルブミン尿との関連についてハザード比(HR)を算出した。
解析は、30の一般集団および心血管ハイリスクの試験コホートと、13のCKD試験コホートからの、102万4,977例(うち糖尿病あり12万8,505例)のデータを組み込んで行われた。
eGFRとACRでみた死亡・末期腎不全のリスクは糖尿病と非糖尿病群でほぼ同程度
追跡期間中央値8.5年(SD 5.0)の間に、全試験コホートでの全死因死亡発生は、7万5,306例であった。また、心血管死亡のデータが得られた23試験コホートでは、追跡期間中央値9.2年(SD 4.9)の間に、心血管疾患死の発生は2万1,237例であった。
一般集団および心血管ハイリスクコホートにおける解析で、糖尿病がある人の死亡リスクは糖尿病がない人よりも、いずれのeGFRとACRの範囲値でも高かった(1.2~1.9倍)。
その一方で、死亡転帰のハザード比は、eGFRが参照値と比べて低値の場合も、またACRが参照値と比べてより高値の場合も、糖尿病患者群と非糖尿病患者群でいずれも同程度であった。たとえば全死因死亡について、eGFR 45mL/分/1.73m
2 vs.参照値95mL/分/1.73m
2のハザード比は、糖尿病患者群1.35(95%信頼区間:1.18~1.55)、非糖尿病患者群1.33(同:1.19~1.48)であった。同じくACR 30mg/g vs.同参照値5mg/gのハザード比は、1.50(同:1.35~1.65)、1.52(同:1.38~1.67)であった。全体の相互作用は有意ではなかった。
また、CKDコホートにおける末期腎不全リスクについても同様の知見が認められた。
上記を踏まえて著者は、「糖尿病患者では死亡および末期腎不全のリスクが高い一方で、eGFRとACRでみた相対リスクは、糖尿病患者と非糖尿病患者でほぼ同等であり、臨床転帰の予測因子として腎疾患の重要性が強調される」と結論した。