表面置換型人工股関節置換術のインプラント残存率は、大腿骨頭径が大きな男性では全置換型人工股関節置換術とほぼ同等だが、それ以外の患者では全般に不良で、とくに女性で劣ることが、英国ブリストル大学のAlison J Smith氏らの検討で示された。従来の全置換型人工股関節のインプラント残存率は年齢が若い患者で不良なことが多いという。そのため、個々の患者の大腿骨頭に合わせた種々のサイズがある表面置換型の人工股関節など、新たなインプラントの開発が進められている。Lancet誌2012年11月17日号(オンライン版2012年10月2日号)掲載の報告。
表面置換型と全置換型の再置換率を比較
研究グループは、種々の大腿骨頭径(36~62mm、9サイズ)のmetal-on-metal表面置換型人工股関節の残存状況(再置換率)を評価し、従来の全置換型人工股関節(ceramic-on-ceramic式:28~40mm、3サイズ、metal-on-polyethylene式:28mm未満、28~44mm、4サイズ)と比較した。
人工関節の初回置換術施行例のレジストリーであるNational Joint Registry of England and Walesの2003年4月~2011年9月までの登録データについて解析を行った。multivariable flexible parametric survival modelを用いて、共変量で調整した再置換術の累積発生率を推計した。
女性と大腿骨頭径の小さい男性で残存率が不良
初回手術例は43万4,560例で、そのうち表面置換型人工股関節置換術を受けたのは3万1,932例(平均年齢54.1歳、60歳未満71.7%、男性69.1%)であった。全置換型人工股関節置換術を受けた患者のうち、ceramic-on-ceramic式が5万7,748例(同:59.6歳、44.7%、43.8%)、metal-on-polyethylene式は22万6,165例(同:72.7歳、6.7%、34.9%)だった。
女性では、すべてのサイズの表面置換型が、全置換型よりもインプラント残存率が不良であった。55歳女性の5年再置換率の予測値は、大腿骨頭径42mmの表面置換型が8.3%、46mm表面置換型が6.1%であったのに対し、28mmのmetal-on-polyethylene全置換型は1.5%だった。
大腿骨頭径が小さい男性でも、表面置換型でインプラント残存率が低かった。55歳男性の5年再置換率の予測値は、大腿骨頭径46mmの表面置換型が4.1%、54mm表面置換型は2.6%で、28mmのmetal-on-polyethylene全置換型は1.9%だった。表面置換型の男性の場合、全般にサイズが大きいほど再置換率は低い傾向が認められた。54mm以上の大きなサイズの男性は23%と少なかったが、再置換率は最も良好だった。
著者は、「表面置換型人工股関節は、大腿骨頭径が大きな男性ではインプラント残存率が比較的良好であったが、それ以外の患者では不良であり、とくに女性で劣っていた」と結論し、「表面型人工股関節置換術は女性には施行せず、男性でも術前に大腿骨頭径を測定して適合性の評価を行うことが推奨される。新たなインプラント技術を導入する前に、表面置換型と全置換型の人工股関節の教訓を学ぶべきだ」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)