特発性VTE初発患者に対する再発予防のための低用量アスピリン投与/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2012/12/05

 

 オーストラリア・Prince of Wales HospitalのTimothy A. Brighton氏らが、800人超について行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果、特発性静脈血栓塞栓症(VTE)の初発患者に対し、抗凝固療法後に低用量アスピリン療法を行っても、再発リスクがプラセボと比較して有意に低下しなかったことが報告された。一方で心血管イベント発生リスクについては、およそ3分の2低下し、研究グループは「正味の臨床的改善は示された」と結論した。特発性VTEを発症した人は、抗凝固療法終了後にVTE再発リスクが増大することが知られ、再発予防にアスピリンが有効である可能性があった。NEJM誌2012年11月22日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。

VTE再発率、プラセボ群が年率6.5%、アスピリン群が同4.8%
 研究グループは、2003年5月~2011年8月に、特発性VTEの初回発症後、抗凝固療法を終了した822人を無作為に2群に分け、一方にはアスピリン(100mg/日)を、もう一方にはプラセボを投与し、最長4年間追跡した。主要アウトカムは、VTEの再発率だった。

 被験者の平均年齢は54~55歳、男性は54~55%だった。追跡期間の中央値は、37.2ヵ月だった。

 追跡期間中のVTE再発は、プラセボ群が411人中73人(年率6.5%)、アスピリン群が411人中57人(年率4.8%)と、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.52~1.05、p=0.09)。

VTEの再発含む心血管疾患イベント発生リスク、アスピリン投与で約3分の2に
 一方、事前に規定した2次複合アウトカムである、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のいずれかの発症率については、プラセボ群が年率8.0%に対し、アスピリン群が年率5.2%と、同リスクは約3分の2に低下した(ハザード比:0.66、同:0.48~0.92、p=0.01)。

 また、もう一つの複合アウトカムで、VTEの再発、心筋梗塞、脳卒中、重大出血、総死亡のいずれかの発生率も、プラセボ群が年率9.0%に対し、アスピリン群が年率6.0%と、およそ3分の2に低下した(ハザード比:0.67、同:0.49~0.91、p=0.01)。

 重大出血または臨床的重大出血の発症率や、重度有害事象の発生率は、両群で有意差はなかった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)