保存赤血球は時間とともに構造および機能が変化する。クリーブランド・クリニック(アメリカ)心臓麻酔部門のColleen Gorman Koch氏らは、心臓手術時に輸血された保存赤血球が古い(2週間超)と、術後の深刻な合併症および死亡率を増大させるとの仮説を立て検証を行った。NEJM誌2008年3月20日号より。
保存期間14日以下輸血患者2,872例と14日超3,130例を検証
Koch氏らは、1998年6月30日~2006年1月30日の間に、冠状動脈バイパス移植、心臓弁手術あるいは両手術の際に、赤血球輸血を受けた患者のデータを調査した。
対象となったのは、保存期間14日以下(中央値11日)の「より新しい血液」8,802Uを受けた患者計2,872例と、14日超(中央値20日)の「より古い血液」10,782Uを受けた患者計3,130例。
「古い」ほうが術後合併症のリスク増大、生存率低下と有意に関連
結果、「より古い血液」を与えられた患者のほうが、合併症および死亡率は高率で、Koch氏らは「保存期間2週間超の赤血球輸血は、術後合併症のリスク増大、生存率低下と有意な関連がみられた」とまとめている。
院内死亡率は2.8%(より新しい血液:1.7%、P=0.004)、72時間超の挿管9.7%(同5.6%、P<0.001)、腎不全2.7%(同1.6%、P=0.003)、敗血症4.0%(同2.8%、P=0.01)。
合併症発生が複数に及ぶ割合も「より古い血液」を与えられた患者のほうが高率で(25.9%対22.4%、P=0.001)、リスク調整後の複合転帰増大も「より古い血液」のほうが関連していた(P=0.03)。
1年時点での死亡率は「より新しい血液」患者は7.4%、対して「より古い血液」を与えられた患者は11.0%で、「より新しい血液」を与えられた患者群で有意に少なかった(P<0.001)。
(武藤まき:医療ライター)