臨床でのEBM教育について、世界保健機構(WHO)がWHO Reproductive Health Library(RHL)に組み込み提供しているe-ラーニングEBM課程は、低中所得国(LMIC)の臨床医の高い知識とスキルに結び付いていることが、WHO政策研究・国際協力部門のRegina Kulier氏らにより報告された。医療現場にEBM診療を文化として根付かせるためには、EBM教育を臨床に組み込む必要があるが、低中所得国では、EBM教育を受けた指導医が不足しており、EBM教育のための時間も確保されておらず、また自発的に学びたくても英語以外のデータベースへアクセスできる環境が整備されていないのが現状だという。JAMA誌2012年12月5日号掲載より。
WHO Reproductive Health Libraryに組み込まれている総合e-ラーニングEBM課程を評価
Kulier氏らは、WHO Reproductive Health Libraryに組み込まれている総合e-ラーニングEBMコースについて、従来EBM教育法と比較した臨床的な知識、スキル、教育環境の効果について、2009年4月~2010年11月に国際クラスター無作為化試験にて評価した。試験は低中所得国7ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、コンゴ、インド、フィリピン、南アフリカ、タイ)の産科・婦人科の卒後研修医を対象とした。
各単位のトレーニングを、WHO RHLを活用して無作為化し、学習の活性度と受講者を評価し(31クラスター、参加者123人)、RHLを利用したEBM課程の自発的学習者(対照群、29クラスター、81人)についても評価した。全単位にEBM経験値を教えるファシリテーターを配置し、学習課程は8週間で、ベースラインと4週時点で評価した。
評価対象となった試験完了者は、介入群24クラスター(98人)、対照群22クラスター(68人)だった。
主要アウトカムは、EBM知識の変化(スコア範囲:0~62)とスキルの変化(同0~14)。副次アウトカムは、教育環境[1(最強)~5(最弱)の5ポイントLikertスケールの指数]とした。
向上した知識やスキルを活かす場も有意に改善
ベースラインの各評価群の年齢、研修期間、EBMに対する姿勢および知識は同程度であった。
試験後、介入群は対照群よりも、EBM知識の平均スコアは有意に上昇した。介入群43.1(95%信頼区間:42.0~44.1)、対照群38.1(同:36.7~39.4)で、補正後格差は4.9(同2.9~6.8、p<0.001)だった。
スキルについても有意に上昇した[9.1(8.7~9.4)vs. 8.3(7.9~8.7)、補正後格差0.7(0.1~1.3)、p=0.02]。
教育環境については全体スコアの改善では、有意な差はみられなかった[13.6(8.0~19.2)vs. 6.0(-0.1~12.0)、補正後格差9.6(-6.8~26.1)、p=0.25]。しかし、一般的なリレーションシップとサポートでは有意に改善がみられ[0.3(-0.6~1.1)vs. -0.5(-1.5~0.4)、補正後格差2.3(0.2~4.3)]、EBM適用機会も有意な改善がみられた[2.9(1.8~4.1)vs. 0.5(-0.7~1.8)、補正後格差3.3(0.1~6.5)、p=0.04]。