子宮頸がん検診における子宮頸部病変の検出能は、ヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査が従来の細胞診よりも高いことが、フィンランドがん登録のMaarit K Leinonen氏らの検討で示された。HPV DNA検査は細胞診に比べ感受性が高く、子宮頸部の進行性病変をより早期に検出するが、非進行性病変をも検出するリスクがあるという。ほとんどのHPV感染は重大な細胞異型を引き起こすことなく迅速に消退するため、HPV検査陽性例は即座に確定診断や治療を要するわけではなく、細胞診の質が高い国では、これら陽性例に対するパパニコロー塗抹標本検査が適切なスクリーニング戦略と考えられている。BMJ誌2012年12月8日号(オンライン版2012年11月29日号)掲載の報告。
HPV DNA検査、細胞診の検出能を前向き無作為化試験で評価
研究グループは、HPV DNA検査および従来の細胞診による子宮頸部の前がん病変、がん病変の検出率を比較するプロスペクティブな地域住民ベースの無作為化試験を行った。
対象は2003~2007年にHPV検査を推奨された25~65歳のフィンランド人女性で、HPV DNA検査を受ける群または細胞診を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。HPV DNA検査の陽性例は細胞診を受けることとした。
主要評価項目は、5年後の2回目の検査または2008年12月31日までの子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)、上皮内腺がん(AIS)、浸潤がん(ICC)の検出率とし、細胞診に対するHPV DNA検査のハザード比(HR)を算出した。
HRはCIN1が1.53、CIN2が1.54、CIN3/AISが1.32、ICCは0.81
HPV DNA検査群に10万1,678人、細胞診群には10万1,747人が割り付けられた。平均フォローアップ期間3.6年の時点で、前がん病変またはがん病変が検出されたのはHPV DNA検査群が1,010人、細胞診群は701人だった。
CIN 1(軽度異形成)の検出のHRは1.53〔95%信頼区間(CI):1.28~1.84〕、CIN2(中等度異形成)のHRは1.54(同:1.33~1.78)、CIN3(高度異形成、上皮内がん)またはAISのHRは1.32(同:1.09~1.59)と、HPV DNA検査の検出能が有意に優れたが、ICCのHRは0.81(同:0.48~1.37)であり2つの検査法に有意な差は認めなかった。
25~34歳の女性における5年間のCIN3またはICCの累積ハザード(累積検出率)は、HPV DNA検査が0.0057(95%CI:0.0045~0.0072)、細胞診は0.0046(同:0.0035~0.0059)、35歳以上の女性ではそれぞれ0.0022(同:0.0019~0.0026)、0.0017(0.0014~0.0021)であった。
著者は、「HPV DNA検査は細胞診よりも子宮頸部病変の検出能が高いことが示された。CIN3またはAISの検出率は、25~34歳、35歳以上の女性のいずれもがHPV DNA検査で高率だったが、35歳以上では両検査の絶対差は小さなものであった」とまとめ、「年齢や検査間隔を十分に考慮して検診対象を選択すれば、HPV DNA検査によって全体的な子宮頸部前がん病変の検出率が、わずかとはいえ改善する可能性がある。一方、これらの知見は、フィンランドは任意型検診の質が高いことを考慮したうえで解釈する必要がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)