植込み型除細動器(ICD)の不適切作動を減らすために、異なる3つの作動プログラミング設定(標準、高心拍、待期的)について検証した国際多施設無作為化試験「MADIT-RIT」の結果が、米国・ロチェスター大学医療センターのArthur J. Moss氏らにより発表された。高心拍および待期的の両作動プログラミングとも、標準作動プログラミングよりも不適切作動は低減し、全死因死亡率も低下したという。ICDは、致死的不整脈リスクを有する患者の死亡率低下への有効性が高いが、一方で不適切作動の頻度が高く(8~40%に及ぶとされる)、その影響は致命的である可能性がある。これまで、不適切作動を低減する最適なICDプログラミングについては不明であったという。NEJM誌2012年12月13日号(オンライン版2012年11月6日号)掲載より。
標準作動vs.高心拍作動、待期的作動のプログラミングを検証
試験は、ICD標準作動プログラミング(170~199拍/分は2.5秒待期で作動、200拍/分以上は1.0秒待期で作動)よりも、200拍/分以上の場合に作動する(高心拍数作動)プログラミング(200拍/分以上2.5秒待期で起動)や、標準プログラミングよりも待期時間を延長して作動するようにした(待期的作動)プログラミングのほうが、不適切作動が少なくなると仮定し行われた。
2009年9月~2011年10月の間に、米国、カナダ、欧州、イスラエル、日本の98病院から被験者1,500人を登録し、2012年7月まで追跡した。
主要エンドポイントは、不適切作動(抗頻脈ペーシングまたはショック)の初回発生であった。
3群の被験者の平均年齢は62~63歳、男性が69.5~72.6%を占めるなど同等であった。
不適切作動初回発生リスク76~79%低下、全死因死亡リスク44~55%低下
平均追跡期間1.4年の間、標準作動プログラミングと比較した不適切作動の初回発生リスクは、高心拍数作動プログラミングは79%低下(ハザード比:0.21、95%信頼区間:0.13~0.34、p<0.001)、待期的作動プログラミングは76%低下(同:0.24、0.15~0.40、p<0.001)した。
また、全死因死亡リスクは、高心拍数作動プログラミングが55%低下(同:0.45、0.24~0.85、p=0.01)、待期的作動プログラミングは44%低下(同:0.56、0.30~1.02、p=0.06)がみられた。
ICD処置関連の有害事象について、3群間に有意な差はみられなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)