急性非代謝性心不全で腎機能低下と持続的うっ血(心腎症候群)を呈した患者への限外濾過法(Aquadex System 100を使用)の有効性と安全性について、段階的薬物療法と比較した無作為化試験の結果、限外濾過法よりも段階的薬物療法のほうが腎機能保護効果に優れていることが米国・ヘネピン郡医療センターのBradley A. Bart氏らにより報告された。また体重減少は同程度であったが、有害事象の発現率は限外濾過法のほうが高かったという。急性非代謝性心不全患者で利尿薬静注を受ける患者は多いが、25~33%で心腎症候群が伴い転帰不良と関連する。心腎症候群には利尿薬静注が直接関与する場合もあり、また腎機能低下後の利尿薬投与はさらなる腎損傷を招く可能性があり、限外濾過法は代替療法としてガイドラインでも明記されている(クラスIIa、エビデンスB)。しかしこれまで有効性と安全性についてはほとんど不明であった。NEJM誌2012年12月13日(オンライン版2012年11月6日号)掲載より。
無作為化後96時間の血清クレアチニン値と体重の変化をエンドポイントとし評価
試験は2008年6月~2012年1月の間、米国・カナダの22施設から、急性非代謝性心不全で心腎症候群を呈した188例を登録して行われた。
被験者は無作為に、限外濾過法(体液除去率200mL/時、94例)または段階的薬物療法(利尿薬静注の増減で尿量3~5L/日を維持、94例)を受ける群に割り付けられた。
主要エンドポイントは、無作為化後96時間で評価した、血清クレアチニン値と体重の、ベースラインからの変化であった。
限外療法群でクレアチニン値が上昇、エンドポイントは薬物療法よりも劣る結果に
結果、96時間時点で評価した血清クレアチニン値および体重のベースラインからの変化は、いずれも有意な差がみられ、エンドポイントは限外濾過法群のほうが薬物療法群よりも劣っていた(p=0.003)。主としては、限外療法群でのクレアチニン値上昇によるところが大きかった。クレアチニン値の変化は、薬物療法群では平均0.04±0.53mg/dL低下したのに対し、限外濾過法群では0.23±0.70mg/dL上昇していた(p=0.003)。
体重減少については、両群で有意差は認められなかった。減少量は薬物療法群が5.5±5.1kg、限外濾過法群は5.7±3.9kgであった(p=0.58)。
一方で、重篤な有害事象を発現した患者の割合は、限外濾過群のほうが薬物療法群よりも高かった(72%対57%、p=0.03)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)