クリスマスソングに登場する世界で最も有名なトナカイのルドルフ。歌にあるように、トナカイの鼻が明るく赤く発光しているのは、鼻腔微小血管の赤血球が豊富で血管密度が高い(ヒトよりも25%高値)からであることを、オランダ・エラスムス大学のCan Ince氏らが、ハンディカムタイプの生体内用ビデオ顕微鏡を使った観察研究によって明らかにした。同ビデオ顕微鏡の登場でヒトの臓器の微小血管を描出することが可能になったが、これまで鼻腔微小血管の描出は行われたことがないという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月14日号)掲載「クリスマス特集」より。
ビデオ顕微鏡でヒトとトナカイの鼻腔微小血管を観察
研究グループは、生体内用ビデオ顕微鏡がルドルフ(空を飛ぶこともできるとされる)の赤く光る鼻の謎を解くことに役立つのではないかとして、同器具を用いた観察研究を行った。
ノルウェーのトロムソ(北極の近く)とオランダのアムステルダムで、5人の健康なボランティアと2頭の大人のトナカイ、およびグレード3の鼻ポリープを有する患者1人を対象に行われた。
主要評価項目は、鼻中隔粘膜の微小血管構造と下鼻甲介の上部構造、赤血球速度、塗り薬に対する微小血管のリアルタイム反応性であった。
伝説のトナカイの赤鼻の謎も明らかに
結果、ヒトとトナカイの鼻腔微小血管は類似していることが明らかになった。
トナカイの鼻中隔粘膜のヘアピン様の毛細血管は、赤血球が豊富であり、潅流血管密度は20(SD 0.7)mm/mm
2であった。
赤血球が流れる毛細血管に囲まれるように点在する陰窩や腺様の構造が、トナカイおよびヒトの両者で認められた。
健康なボランティアに対して行った鼻腔微小血管の反応性テスト(局所麻酔薬で血管収縮を引き起こす)の結果は、毛細血管の血流をダイレクトに停止させたことが確認された。
また、鼻ポリープを有する患者では、微小血管の異常が認められた。
以上の結果を踏まえて著者は、「トナカイの鼻腔微小血管は赤血球が豊富で、潅流血管密度もヒトより25%高かった。これらの結果は、ルドルフの鼻は赤く光るという伝説が、固有の生理学的な性質であることを示す。その特性は、そりを引いている間に鼻が凍らないようにして、トナカイの脳内温度を調節するためであり、極寒下でサンタクロースをそりに乗せて飛ぶのに必須なものであることが強調された」とまとめている。