非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はプラセボと比較して、わずかではあるが有意に睡眠導入を改善することが、米国・コネティカット大学のTania B Huedo-Medina氏らが、米国医薬品局(FDA)集約の臨床データのメタ解析を行い報告した。改善は用量の増大につれ、またとくに若者、女性でみられ、薬剤の種類は問わなかった。一方で、効果サイズが小さく、またプラセボ効果が約半分に認められ、両者を合わせた臨床的効果は相当に大きかったものの、臨床的意義に疑念があったという。著者は、不眠症治療時にその点について注意する必要があると述べている。BMJ誌2013年1月5日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載より。
エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデムのFDA提出データをメタ解析
研究グループは、成人における非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z薬)の有効性をプラセボと比較することを目的とし、先行研究のメタ解析では刊行バイアスが指摘され、プラセボ効果が不明であったことから、FDAのデータを用いてシステマティックレビューによるメタ解析を行った。解析は、近年承認されたエスゾピクロン(商品名:ルネスタ)、ザレプロン(国内未承認)、ゾルピデム(同:マイスリー)の無作為化二重盲検並行プラセボ対照試験データを対象とした。試験薬群とプラセボ群のベースラインから試験後のスコア変化を抽出し、試験薬の有効性について、両スコア変化の差を調べ解析した。
主要アウトカムは、睡眠ポリグラフと主観的睡眠潜伏期についてのスコア差(ランダム効果モデルを用いた加重標準化平均差)で、副次アウトカムには、睡眠後の覚醒、覚醒回数、総睡眠時間、睡眠効率、主観的睡眠の質などとした。薬効の不均一性については加重最小二乗回帰分析にて検証した。
解析には13試験が組み込まれた。試験薬とプラセボの比較検討(タイプ別アウトカム、試験薬別、投与量別)は65件だった。被験者は4,378例で、さまざまな国から参加していた。投与量、投与期間、試験年度もさまざまであった。
投与量増、若者、女性、ゾルピデムでより改善の傾向
解析の結果、Z薬は、わずかではあったが有意な改善(減少)が、睡眠ポリグラフにみる睡眠潜伏期(加重標準化平均差:-0.36、95%信頼区間:-0.57~-0.16)、および主観的睡眠潜伏期(同:-0.33、-0.62~-0.04)で認められた。
加重平均差の解析の結果、Z薬はプラセボと比較して、睡眠ポリグラフの睡眠潜伏期を22分(95%信頼区間:11~33)短縮した。
副次アウトカムについては有意な効果は見いだせなかったが、多数の試験で、これらのアウトカムが得られるのは確実であることを報告していた。
また変数解析の結果、睡眠潜伏期がより減少を示す傾向は、「投与量がより多い」「投与期間がより長い」「より若い」「(より若い)女性」、そして「ゾルピデム」で認められた。
なお著者は本解析に用いたFDAのデータについて、刊行バイアスの影響は受けていないが、他の病状のバイアスを受けている可能性はあると指摘している。