上部消化管出血への輸血、ヘモグロビン値7g/dL未満の制限輸血で死亡リスク半減/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/01/23

 

 急性上部消化管出血への輸血戦略では、ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血をする「制限輸血」のほうが、同値9g/dL未満での輸血戦略よりも、死亡リスクが約半減するなどアウトカムが良好であることが明らかにされた。スペイン・Hospital de Sant PauのCandid Villanueva氏らが900人超について行った無作為化試験の結果、報告したもので、NEJM誌2013年1月3日号で発表した。急性消化管出血への輸血について、ヘモグロビン値を基準に実施を判断する治療法については議論が分かれていた。

制限輸血群の51%、非制限輸血群の15%で輸血行わず
 研究グループは、重度急性上部消化管出血の患者921人を無作為に2群に分け、一方の群(461人)には制限輸血(ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血)を、もう一方の群(460人)には非制限輸血(ヘモグロビン値9g/dL未満で輸血)を行い、有効性および安全性について比較した。被験者のうち肝硬変が認められた277人(31%)については、両群均等に割り付けを行った。

 結果、輸血を受けなかったのは、制限輸血群225人(51%)、非制限輸血群は65人(15%)だった(p<0.001)

6週間死亡リスク、制限輸血群は非制限輸血群の0.55倍
 6週間後の生存率は、非制限輸血群が91%に対し、制限輸血群が95%と有意に高率だった(p=0.02)。死亡に関する、制限輸血群の非制限輸血群に対するハザード比は、0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)だった。

 再出血が発生したのは、非制限輸血群が16%に対し、制限輸血群は10%と有意に低率だった(p=0.01)。有害事象発生率は、非制限輸血群が48%に対し、制限輸血群は40%と有意に低率だった(p=0.02)。

 サブグループ分析では、消化性潰瘍に関連した出血群の生存率については、制限輸血群のほうがわずかに高値であった(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.26~1.25、p=0.26)。肝硬変Child–Pugh分類別にみると、AまたはBの人については有意に高かったが(同:0.30、0.11~0.85、p=0.02)、Cの人については両群で同程度だった(同:1.04、0.45~2.37、p=0.91)。

 また、非制限輸血群では当初5日間に肝静脈圧較差の増大が有意であった(p=0.03)。制限輸血群では有意な増大はみられなかった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)