マンモグラフィによる乳がん検診や、便潜血検査による大腸がん検診では、受診者1,000人当たり1例の死亡を予防するのに約10年を要することが、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSei J Lee氏らの検討で示された。欧米のガイドラインでは、がん検診はより健康的でより高齢の集団を対象とするよう推奨されているが、検診による害に対しベネフィットを得るには時間を要する。乳がんや大腸がんの検診が生存ベネフィットをもたらすのに要する時間差はこれまで明らかでなかった。BMJ誌2013年1月13日号(オンライン版1月8日号)掲載の報告。
検診のベネフィットが得られるまでの期間をメタ解析で評価
研究グループは、乳がんまたは大腸がん検診を受けてから生存ベネフィットが確認されるまでの期間を検討するために、検診受診者と非受診者を比較した地域住民ベースの無作為化試験のメタ解析を行った。
解析の対象は、Cochrane CollaborationおよびUnited States Preventive Services Task Forceのレビューで質が高いと評価された試験とした。米国、デンマーク、英国、スウェーデンで実施された試験に参加した40歳以上の検診受診者のデータを解析した。
主要評価項目は、乳がん検診(マンモグラフィ)または大腸がん検診(便潜血検査)の受診から死亡までの期間とした。
最適な検診対象は余命10年以上の集団
乳がん検診に関する5試験および大腸がん検診の4試験が解析の対象となった。
乳がん検診では、1例の乳がん死を予防するのに要する期間は、受診者1万人当たりで1.8年、5,000人当たりで3.0年、2,000人当たりで6.2年、1,000人当たりで10.7年、500人当たりでは15.9年であった。
大腸がん検診では、1例の大腸がん死の予防に要する期間は、受診者1万人当たりで3.7年、5,000人当たりで4.8年、2,000人当たりで7.3年、1,000人当たりで10.3年、500人当たりでは14.6年であった。
著者は、「乳がんおよび大腸がんともに、検診の対象は10年以上の余命が期待される集団が最適である」と結論し、「検診の効果が現れるまでの時間差を検診ガイドラインに組み込めば、検診のリスクとベネフィットをよりよく検討するようになるだろう」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)