第3世代の生分解性ポリマーを使用したバイオリムス溶出性ステントは、第1世代のシロリムス溶出性ステントと比較して、1年フォローアップ時点の臨床アウトカムを改善しなかったことが、デンマーク・Aarhus大学病院のEvald Hoj Christiansen氏らによる非劣性試験SORT OUT Vの結果、報告された。第3世代の生分解性ポリマー薬剤溶出性ステントは、第1世代の永続性ポリマーを使用した薬剤溶出性ステントと比べてステント血栓症のリスクを低下する可能性が示されていた。Lancet誌オンライン版2013年1月30日号掲載報告より。
第1世代シロリムス溶出性ステントと安全性・有効性を比較
研究グループは住民ベースにおいて、生分解性ポリマー・バイオリムス溶出性ステントの効果を永続性ポリマー被覆のシロリムス溶出性ステントと比較することを目的とした。
SORT OUT V試験は、多施設共同全来院者による無作為化非劣性試験で、デンマーク西部の3施設で行われた。適格患者は、慢性安定性冠動脈疾患または急性冠症候群を有し、1つ以上の冠動脈病変(径狭窄率>50%)がある18歳以上の者とした。
被験者はコンピュータにより無作為化され、生分解性ポリマー・バイオリムス溶出性ステント(ノボリ、テルモ製)または永続性ポリマー・シロリムス溶出性ステント(Cypher Select Plus, Cordis, Johnson & Johnson,Warren製)を受ける群に割り付けられた。
主要エンドポイントは9ヵ月時点の安全性(心臓死、心筋梗塞、確認されたステント血栓症)と有効性(血行再建)の複合アウトカムとし、intention to treat解析にて評価した(非劣性マージン0.02)。
1年時点での臨床アウトカムの改善認められず
2009年7月~2011年1月に、バイオリムス溶出性ステント群に1,229例(病変数1,532)が、シロリムス溶出性ステント群に1,239例(病変数1,555)が無作為化され追跡された。患者1例は移住のため追跡不能であった。
intention to treat解析の結果、主要エンドポイントを達成したのは、バイオリムス溶出性ステント群50例(4.1%)、シロリムス溶出性ステント群39例(3.1%)だった。リスク差は0.9%(95%CI上限値:2.1%)であった。
安全性について、12ヵ月時点のステント血栓症の発生が、バイオリムス溶出性ステント群(9例・0.7%)のほうがシロリムス溶出性ステント群(2例・0.2%)よりも有意に高率だった(リスク差:0.6%、95%CI:0.0~1.1、p=0.034)。
またper-protocol解析の結果、主要エンドポイントを達成したのは、バイオリムス溶出性ステント群は1,193例のうち45例(3.8%)であり、シロリムス溶出性ステント群は1,208例のうち39例(3.2%)であった。リスク差は0.5%(95%CI上限値:1.8%)だった(非劣性のp=0.03)。
以上を踏まえて著者は、「1年時点で、バイオリムス溶出性“ノボリ”ステントは、第1世代のシロリムス溶出性ステントと比べて臨床アウトカムを改善しなかった。バイオリムス溶出性ステントを日常診療に用いることを推奨するには、長期データを入手する必要があるだろう」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)