限局性前立腺がんで前立腺全摘除術を受けた患者と放射線療法を受けた患者の機能的アウトカムについて、15年の長期にわたる追跡の結果、両群で有意な差はみられなかったことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のMatthew J. Resnick氏らが、Prostate Cancer Outcomes Study(PCOS)の被験者データを解析した結果で、NEJM誌2013年1月31日号で発表した。
限局性前立腺がん患者1,655人を15年間追跡、排尿・排便・性機能について比較
PCOSは、1994年~1995年に全米6州で限局性前立腺がんと診断され登録した被験者を、6、12ヵ月時点で評価したサーベイ研究で、3,533人がサーベイを完了した。Resnick氏らは同データを用いて、診断時年齢55~74歳で2、5年時の追跡評価を完了しており、診断後1年以内でプライマリ治療として根治的前立腺摘除術あるいは体外照射療法(アンドロゲン除去療法有無問わず)を受けた1,655人を対象とし、両群の長期の排尿・排便・性機能について比較した。
機能状態の比較は、診断後2、5、15年時点について行い、多変量傾向スコアを用いて治療別の機能アウトカムを比較した。
解析対象の1,655人のうち、前立腺全摘除術群は1,164人、放射線療法群は491人であった。
2、5年時点は有意差がみられたが、15年時点では認められず
尿失禁について、2年時点、5年時点のいずれにおいても全摘除群が放射線療法群よりも多い傾向が認められた。オッズ比は、2年時点6.22[95%信頼区間(CI):1.92~20.29]、5年時点5.10(同:2.29~11.36)だった。
しかし15年時点では、尿失禁に関する両群のオッズ比に有意な差はみられなかった(オッズ比:2.34、95%CI:0.88~6.23)。
同様に、勃起障害についても、2年時点(同:3.46、1.93~6.17)、5年時点(同:1.96、1.05~3.63)では全摘除群が多い傾向がみられたが、15時点では両群間の有意差は認められなかった(同:0.38、0.12~1.22)。
排便機能については、便意切迫が全摘除群で低い傾向が、2年時点(同:0.39、0.22~0.68)、5年時点(同:0.47、0.26~0.84)でみられたが、15年時点では有意差は認められなくなっていた(同:0.98、0.45~2.14)。
以上を踏まえて著者は、「前立腺全摘除術または放射線療法を受けた患者間に、15年時点では疾患特異的な機能アウトカムの相対的な有意差はみられなかった。ただし15年の追跡期間中、概して限局性前立腺がんの治療を受けた男性はすべての機能が低下していた」と結論し、「前立腺がんは治療後、多くの場合が長期生存する。そのことを考慮して、本データは限局性前立腺がんの治療を検討している男性患者への助言として役立つであろう」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)