経口抗凝固薬を服用中で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要とされる患者には、アスピリンやクロピドグレル(商品名:プラビックス)の抗血小板薬療法が推奨されている。その場合3剤併用療法は深刻な出血リスクを招くが、オランダ・Twee Steden HospitalのWillem J M Dewilde氏らの研究グループは、クロピドグレル単独と、クロピドグレル+アスピリンを併用した場合の有効性および安全性を調べる非盲検無作為化比較対照試験を行った。その結果、クロピドグレル単独追加群では出血性合併症が有意に減少し、血栓性イベントが増加しなかったことを報告した。Lancet誌オンライン版2013年2月13日号より。
PCI後1年以内の全出血イベントの発生を評価
研究グループは、ベルギーとオランダの15施設で非盲検多施設無作為化比較対照試験を行った。期間は2008年11月~2011年11月の間で、経口抗凝固薬を服用中でPCIを受けた成人患者(18~80歳)を無作為に、クロピドグレル単独(抗凝固療法と合わせて2剤併用)またはクロピドグレル+アスピリン(3剤併用療法)のいずれかに割り付け追跡した。
主要アウトカムは、PCI後1年以内の全出血イベントとし、intention to treat解析にて評価した。
クロピドグレル単独群は出血イベントが有意に減少
573例の患者が登録され、そのうち1年間のデータが得られたのは、2剤併用療法群284例中279例(98.2%)、3剤併用療法群289例中284例(98.3%)だった。平均年齢はそれぞれ70.3(SD 7.0)歳、69.5(同8.0)歳であった。
出血エピソードは、2剤併用療法群が54例(19.4%)、3剤併用療法群は126例(44.4%)で認められた[ハザード比(HR):0.36、95%信頼区間(CI):0.26~0.50、p<0.0001]。
多発性の出血イベントは、3剤併用療法群34例(12.0%)であったのに対し、2剤併用療法群では6例(2.2%)だった。
1単位以上の輸血を必要とした患者は、3剤併用療法群27例(9.5%)であったが、2剤併用療法群では11例(3.9%)だった(Kaplan-Meier解析によるオッズ比:0.39、95%CI:0.17~0.84、p=0.011)。
結果を踏まえて著者は、「経口抗凝固薬服用中でPCIを受けた患者には、クロピドグレル+経口抗凝固薬による治療が出血性合併症の有意に低いリスクと関連していた」と結論。「試験は小規模であったが、アスピリンを控えたことによる血栓イベントリスク増大のエビデンスは見いだすことができなかった」とも述べている。
(朝田哲明:医療ライター)