急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の治療において、高頻度振動換気法(high-frequency oscillation ventilation:HFOV)は従来の機械的換気法と30日死亡率が同等で、改善効果はないことが、英国・オックスフォード大学のDuncan Young氏らの検討で示された。ARDS患者は動脈血の酸素化を維持するために機械的人工換気を要するが、この治療法は2次的に肺傷害を引き起こすことがある。HFOVは、肺傷害のリスクの回避に有用な可能性があるという。NEJM誌オンライン版2013年1月22日号掲載の報告。
HFOVの有用性を従来の人工換気法と比較
OSCAR(Oscillation in ARDS)試験は、ARDS患者に対するHFOVの有用性を従来の人工換気法と比較する無作為化対照比較試験。
対象は、年齢16歳以上、呼気終末陽圧(PEEP)≧5cm水柱の動脈血酸素分圧(PaO
2)/吸気酸素分画(FIO
2)≦200mmHg(26.7kPa)で、最低2日以上の機械的人工換気を要すると予測される症例とした。これらの患者が、HFOVを施行する群または通常の人工換気を行う群(参加施設の通常の換気法)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、割り付けから30日までの全死因死亡。
30日全死因死亡率:41.7%vs 41.1%(p=0.85)
2007年12月~2012年7月までに、イングランド、ウェールズ、スコットランドの29施設から795例が登録され、HFOV群に398例(平均年齢54.9歳、男性64.3%、平均APACHE IIスコア21.8、平均PaO
2/FIO
2 113mmHg)が、通常介入群には397例(同:55.9歳、60.2%、21.7、113mmHg)が割り付けられた。
30日全死因死亡率は、HFOV群が41.7%(166/398例)、通常介入群は41.1%(163/397例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(p=0.85)。施設、性別、APACHE IIスコア、PaO
2/FIO
2で調整後の通常介入群のオッズ比は1.03(95%信頼区間:0.75~1.40、p=0.87)であった。
初回ICU退院時死亡率はHFOV群44.1%、通常介入群42.1%(p=0.57)、初回病院退院時死亡率はそれぞれ50.1%、48.4%(p=0.62)で、いずれも有意差はみられなかった。平均ICU入院期間はHFOV群17.6日、通常介入群16.1日(p=0.18)、平均病院入院期間はそれぞれ33.9日、33.1日(p=0.79)だった。
抗菌薬の平均投与期間はHFOV群12.8日、通常介入群12.4日(p=0.56)、そのうち肺感染症に対する投薬率はそれぞれ64.4%、67.5%であった。
著者は、「ARDSの治療において、HFOVは従来の機械的換気法に比べ30日死亡率を改善しなかった」と結論し、「本試験ではHFOVの有用性および有害性はともに示されなかった。HFOVはルーチンの治療には使用しないよう推奨する」としている。
(菅野守:医学ライター)