CTにより測定される冠動脈カルシウムスコアは、従来のリスク因子とは別に冠動脈性心疾患が予測できる独立したリスク因子であることが報告されている。ただしこれは白人を母集団にした場合で、その他の人種・民族集団においても独立したリスク因子となりうるかどうかは明らかではない。カリフォルニア大学放射線部門のRobert Detrano氏らは、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア人(中国人)の4つの人種・民族集団を対象とした循環器系疾患の前向き研究であるMESA(Multiethnic Study of Atherosclerosis)参加者のデータを用い検証した。NEJM誌2008年3月27日号にて掲載。
MESA被験者男女計6,722例を3.8年経過観察
対象となったのは全米6地点(シカゴ、フォーサイス、ノースカロライナ、ロサンゼルス、ニューヨーク、セントポール)の医療センターで2000年7月~2002年9月の間に集められたMESA被験者男女計6,722例。年齢は45~84歳、登録時点で心血管疾患を有していない参加者の冠動脈カルシウム検査値を調べ、中央値3.8年にわたり経過を観察した。被験者の人種内訳は白人38.6%、黒人27.6%、ヒスパニック系21.9%、中国系11.9%。
結果、162例の冠動脈イベントがみられ、そのうち89例が心筋梗塞または冠動脈性心疾患による死亡例だった。
スコアが増すほどリスクも増大
冠動脈イベントリスクを被験者の冠動脈カルシウム沈着有無別で比較すると、沈着が認められなかった被験者と比べ冠動脈カルシウムスコア(石灰化指数)101~300を持つ被験者ではイベントリスクが9.67倍に、スコア300以上の被験者では7.73倍だった(両群比較P<0.001)。
4人種・民族集団全体でみると、冠動脈カルシウムスコア倍増に伴い、重大な冠状動脈イベントリスクは18~39%増に、全冠状動脈イベントリスクも15~35%増となっていた。
またROC解析の結果、カルシウムスコアをリスク因子の標準として加えると、重大および全冠動脈イベントの予測に関する数値が増すことも示された。
これらからDetrano氏らは、「冠動脈カルシウムスコアは白人母集団に限らず冠動脈性心疾患の強力な予測因子であり、標準的なリスク因子を上回る予測情報を提供する。その予測能に人種・民族集団間の大きな差はない」と結論づけている。
(武藤まき:医療ライター)