慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2020年には世界的な死亡原因の第3位になると予想されている。喫煙がCOPDの主要なリスク因子であることはすでに明らかだが、受動喫煙の影響については情報がほとんどない。
イギリス・バーミンガム大学公衆衛生学・疫学科のP. Yin氏らは、中国の中高年者において受動喫煙がCOPDおよび呼吸器症状に及ぼす影響を調査、その関連性が明らかになるとともに深刻な事態が浮き彫りにされた。9月1日付Lancet誌掲載の報告。
喫煙未経験者の受動喫煙状況とCOPDの関連を調査
「広州バイオバンクコホート試験」は、中国南部地域における環境要因と呼吸器疾患の遺伝的因子の関連を調査する疫学研究で、2003~2006年に50歳以上の20,430人が登録された。Yin氏らは、今回、このうち15,379人(女性13,602人、男性1,777人)の喫煙未経験者のデータをもとに受動喫煙とCOPD、呼吸器症状の関連について解析を行った。
在宅時および就業時の受動喫煙の曝露状況[曝露の程度(住居、職場の喫煙者数)および曝露期間]を自己申告によって記録した。COPDの診断は、スパイロメトリーを用いてGOLDガイドラインに基づいて行った。
受動喫煙者に向け緊急対策を講じるべき
高度曝露群(40時間/週、5年以上)は、軽度曝露群(40時間/週、2年未満)に比べCOPDのリスクが有意に増大していた(補正オッズ比1.48、 95%信頼区間1.18-1.85、p=0.001)。また、呼吸器症状全般の発現頻度も有意に増加していた(同1.16、1.07-1.25、p <0.0001)。
Yin氏は、「受動喫煙はCOPDおよび呼吸器症状発現の有意なリスク因子である」と結論したうえで、「中国では、受動喫煙によって1,900万人の喫煙未経験者がCOPDで死亡していると推計されるが、これはきわめて深刻な事態だ」と指摘、「今回の知見は、受動喫煙者に向けた緊急対策を促す強力なエビデンスをもたらすものだ」と警鐘を鳴らしている。
(菅野 守:医学ライター)