左室駆出率が保存された左室拡張機能障害の認められる心不全患者に対する、抗アルドステロン薬スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)の長期投与は、左室拡張機能を改善することが示された。一方、最大運動耐容能の改善効果は認められなかった。ドイツ・ゲッチンゲン大学のFrank Edelmann氏らによる、400例超について行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験「Aldo-DHF」からの報告で、JAMA誌2013年2月27日号で発表された。本検討は、同患者について確立した治療法がない中、その進行にアルドステロン活性が関与している可能性が示されたことが背景にあった。
スピロノラクトン25mgを1日1回投与、12ヵ月追跡
Aldo-DHF試験は、左室駆出率が保存されている心不全患者に対して、スピロノラクトンの長期投与の有効性と安全性を検討することを目的とした。2007~2012年にかけて、ドイツ、オーストリアの医療機関10ヵ所を通じて、同症状を呈する患者422例を対象に行われた。被験者を無作為に2群に分け、一方の群(213例)にはスピロノラクトン25mgを1日1回、もう一方の群(209例)にはプラセボを投与し、12ヵ月間追跡し左室拡張機能と最大運動耐容能に対する効果について比較した。
被験者はNYHA心機能分類クラスIIまたはIIIで、左室駆出率が50%以上、左室拡張機能障害が認められた。被験者の平均年齢は67歳(SD:8)、52%が女性だった。
左心室拡張機能は有意に改善、逆リモデリングも促進
平均追跡期間は、11.6ヵ月だった。結果、左室拡張機能はスピロノラクトン群で有意に改善し、平均E/e値は12.7(SD:3.6)から12.1(同:3.7)へと減少したが、プラセボ群では平均12.8(同:4.4)から13.6(同:4.3)へと増加した[補正後平均差:-1.5、95%信頼区間(CI):-2.0~-0.9、p<0.001]。
一方、最高酸素摂取量の変化には両群で有意差はなく(補正後平均差:+0.1mL/分/kg、95%CI:-0.6~0.8、p=0.81)、スピロノラクトンの最大運動耐容能への効果は認められなかった。
また、スピロノラクトンは逆リモデリングを促し(p=0.009)、神経内分泌活性を改善したが(p=0.03)、心不全症状やQOLの改善は認められなかった。さらに、6分間歩行距離はやや減少した(-15m、95%CI:-27~-2、p=0.03)。
その他にスピロノラクトン群では、いずれも入院は伴わずわずかではあったが、血清カリウム値の上昇(+0.2mmol/L、95%CI:0.1~0.3、p<0.001)、およびeGFR値の減少(-5mL/分/1.73m
2、95%CI:-8~-3、p<0.001)がみられた。
これらの結果を踏まえて著者は、「本試験で認められた左室機能改善についての臨床的意義は、さらなる大規模な試験で検討する必要がある」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)