心筋線維化、拡張型心筋症の新たな予後因子に/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2013/03/18

 

 非虚血性拡張型心筋症患者の新たな独立の予後因子として、心筋線維化が有用である可能性が、英国・王立ブロンプトン病院のAnkur Gulati氏らの検討で示された。左室駆出率(LVEF)と組み合わせれば、さらに強力な予後予測能が得られることも示唆された。非虚血性拡張型心筋症のリスク分類は主にLVEFに基づいて行われるが、よりよい予後因子が同定されれば、植込み型除細動器(ICD)などが適応となる患者の選定に役立つ可能性があるという。JAMA誌2013年3月6月号掲載の報告。

心筋線維化の予後予測能を縦断的研究で前向きに検討
 研究グループは、非虚血性拡張型心筋症患者における死亡および心臓突然死(SCD)の独立予後因子として、心筋線維化について評価するプロスペクティブな縦断的研究を実施した。

 2000年11月~2008年12月までに、ロンドン市の王立ブロンプトン病院に紹介された拡張型心筋症患者を対象とし、2011年12月までフォローアップを行った。ガドリニウム増強遅延造影(LGE)心血管核磁気共鳴(CMR)画像を用いて、左室心筋中層の置換性線維形成の評価を行った。1次エンドポイントは全死因死亡とした。

線維化をともなう患者で死亡リスクが約3倍に
 登録された472例のうち、心筋線維化を有する患者が142例(平均年齢50.9歳、男性77.5%)、線維化がみられない患者は330例(同:51.2歳、64.9%)であった。

 フォローアップ期間中央値5.3年(2,557人年)における全死因死亡率は、線維化群が26.8%(38例)と、非線維化群の10.6%(35例)に比べ有意に高かった[ハザード比(HR):2.96、95%信頼区間(CI):1.87~4.69、絶対リスク差:16.2%、95%CI:8.2~24.2、p<0.001]。

 不整脈関連の複合エンドポイント[SCD、SCD回避症状(ICD、非致死的心室細動、持続性心室頻拍)]の発現率も、線維化群の29.6%(42例)に対し非線維化群は7.0%(23例)と有意な差がみられた(HR:5.24、95%CI:3.15~8.72、絶対リスク差:22.6%、95%CI:14.6~30.6、p<0.001)。

 LVEFなど従来の予後因子で調整すると、線維化の存在(HR:2.43、95%CI:1.50~3.92、p<0.001)および線維化の程度(HR:1.11、95%CI:1.06~1.16、p<0.001)はいずれも全死因死亡との独立の関連が認められた。ほかにも、心筋線維化は心血管死/心臓移植、SCD/SCD回避症状、心不全関連の複合エンドポイント(心不全による死亡、入院、心臓移植)との独立の関連を示した。

 予後因子としてLVEFに心筋線維化を加えると、純再分類改善度(NRI)で評価した全死因死亡(NRI:0.26、95%CI:0.11~0.41、p=0.001)およびSCD関連の複合エンドポイント(同:0.29、95%CI:0.11~0.48、p=0.002)のリスク再分類が有意に改善した。

 著者は、「非虚血性拡張型心筋症患者におけるLGE-CMR画像による左室心筋中層の線維化の評価は、LVEFだけでは得られない独立の予後情報をもたらした」と結論し、「拡張型心筋症のリスク分類におけるLGE-CMR画像の役割についてはさらなる検討を要する」としている。

(菅野守:医学ライター)