乳がんの放射線療法は、虚血性心疾患を増大することが、英国・オックスフォード大学のSarah C. Darby氏らによる住民ベースの症例対照研究の結果、報告された。疾患増大は平均照射線量に比例しており、照射曝露後数年以内に増大し始め20年以上続くこと、もともと心臓リスク因子を有する女性の絶対リスクが大きいことも明らかになった。乳がんの放射線療法では、心臓への偶発的な電離放射線曝露の頻度が高い。しかし、曝露による心臓への影響、その後の虚血性心疾患リスクについては確認されていなかった。NEJM誌2013年3月14日号掲載の報告。
放射線療法を受けた2,168例の主要冠動脈イベント発生を分析
本研究は、心筋梗塞、冠動脈再建、虚血性心疾患死といった主要冠動脈イベント発生について、1958~2001年に、侵襲性乳がんのため体外照射線療法を受けたデンマークおよびスウェーデンの女性2,168例(主要冠動脈イベント発生群963例、対照群1,205例)を対象に検討が行われた。
被験者情報は病院の診療録から入手した。各被験者の、心臓全体と左冠動脈前下行枝(LAD)への平均照射線量を治療チャートから算出し分析に用いた。
照射線量1Gy増大につき主要冠動脈イベント発生率7.4%増大
結果、全被験者における、心臓全体への平均照射線量は4.9Gy(範囲:0.03~27.72)であった。
主要冠動脈イベント発生率は、心臓への平均照射線量と比例しており、照射線量1Gy増大につき7.4%(95%信頼区間:2.9~14.5、p<0.001)の上昇がみられた。明瞭な閾値は示されなかった。
イベント発生の増大は、照射後5年以内に始まり30年間継続した。
照射線量1Gy当たりの主要冠動脈イベント率の増大は、放射線療法時に心臓リスク因子がある女性とない女性で同程度であった。