禁煙で体重が増えても心血管疾患リスクは減少/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2013/04/15

 

 非糖尿病者では、禁煙により心血管疾患(CVD)のリスクが大きく低下する一方で体重の増加がみられるが、禁煙による心血管ベネフィットは体重増加では損なわれないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のCarole Clair氏らの検討で明らかとなった。米国では喫煙は予防可能な死亡の主要因とされ、CVDの重要なリスク因子である。禁煙によりCVDリスクは実質的に低減するが、禁煙の数少ない有害作用に体重増加があり、肥満もCVDのリスク因子であることから、禁煙を考慮中の喫煙者の高い関心を呼んでいる。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告。

禁煙後の体重増加の影響をフラミンガム子孫研究のデータで解析
 研究グループは、禁煙後の体重増加は糖尿病の有無にかかわらず禁煙のベネフィットを損ねないとの仮説を立て、これを検証するためにプロスペクティブな地域住民ベースのコホート試験を行った。

 解析には、1984~2011年までに収集されたフラミンガム子孫研究のデータを用いた。4年ごとに調査を行い、自己申告に基づく喫煙状況を4つのカテゴリー[喫煙、短期禁煙(≦4年)、長期禁煙(>4年)、生涯非喫煙]に分類した。

 Cox比例ハザードモデルによるプール解析を行って禁煙と6年CVDイベントの関連を評価し、禁煙後4年間の体重の変化が禁煙とCVDイベントの関連に及ぼす影響について検討した。評価項目は6年間の総CVDイベント(冠動脈心疾患、脳血管イベント、末梢動脈疾患、うっ血性心不全)とした。

体重は増加したが、CVDリスクは喫煙者の半分に
 平均フォローアップ期間は25年であった。この間に、対象となった3,251人(平均年齢47.8歳、女性51.7%、平均体重74.8kg、平均BMI 26.1kg/m2)に631件のCVDイベントが発生した。

 4年間の体重増加中央値は、短期禁煙の非糖尿病の参加者が2.7kg、短期禁煙の糖尿病の参加者は3.6kgと、長期禁煙非糖尿病の0.9kg、長期禁煙糖尿病の0.0kgに比べて大きかった(p<0.001)。

 非糖尿病参加者における年齢・性別で調整後の100人-調査当たりのCVD発症率は、喫煙者が5.9件[95%信頼区間(CI):4.9~7.1]、短期禁煙者が3.2件(同:2.1~4.5)、長期禁煙者が3.1件(同:2.6~3.7)、生涯非喫煙者は2.4件(同:2.0~3.0)であった。

 喫煙者との比較における、CVDリスク因子で調整後のCVDのハザード比(HR)は、短期禁煙者が0.47(95%CI:0.23~0.94)、長期禁煙者は0.46(同:0.34~0.63)であった。調整因子に体重変化を加えても、これらの関連への影響はほとんどなかった(短期禁煙者のHR:0.49、95%CI:0.24~0.99、長期禁煙者のHR:0.46、95%CI:0.34~0.63)。

 糖尿病の参加者では、非糖尿病と類似の点推定値が得られたが、CVDリスクの低減と禁煙との関連には、統計学的な有意差を認めなかった(短期禁煙者のHR:0.49、95%CI:0.11~2.20、長期禁煙者のHR:0.56、95%CI:0.28~1.14)。これは試験のパワーが不足していたためと考えられた。

 著者は、「非糖尿病の参加者は禁煙によりCVDイベントのリスクが低下し、禁煙後にみられた体重増加はこの効果に影響を及ぼさなかった」とまとめ、「この知見は、たとえ禁煙の結果として体重が増加しても、禁煙による心血管ベネフィットは、損なわれずに本質的なものとして保持されることを示す」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来