英国・MRC臨床試験ユニットのClaire L Vale氏らは、既報試験をメタ解析に組み込む適切な方法論として、バイアスリスク評価を既報試験に基づき行う評価手法が信頼できるものであるかを検証した。現在、Cochraneシステマティックレビューの際にはCochraneバイアスリスクツールで評価を行うことが必須とされている。長じてその評価が、メタ解析への既報試験の包含判定方法として示唆されており、Vale氏らは同ツールによる評価が妥当なのかを検討した。BMJ誌オンライン版4月22日号掲載の報告より。
Cochraneバイアスリスクツールと付属ガイダンスでバイアスリスクを評価し検証
バイアスリスク評価の信頼度を評価した本検討は、がん治験に関する被験者個人データ(IPD)に基づく13の公表されているメタ解析報告を対象とした。同報告は95の無作為化試験がソースとして用いられていた。
研究グループは、Cochraneバイアスリスクツール(RevMan5.1)および付随ガイダンスを用いてバイアスリスクの評価を行った。評価は、個別的なバイアスリスク分野と各試験全体について、(1)各試験報告単独に基づく情報、あるいは(2)IPDメタ解析で集約された追加情報を加味した試験報告の情報の2つのアプローチを用いて行った。
個別分野と試験全体それぞれについての評価の一致率を算出し、規定値(<66%:低い、≧66%:まあまあ、≧90%:良い)に基づき信頼度を評価した。一致率が「良い」場合にのみ、2つのアプローチはともに信頼できるとした。
既報試験単独情報に基づくバイアスリスク評価は信頼できない可能性
結果、割り付け順番の作成についてのバイアスリスクを評価した2つのアプローチの評価の一致率は69.5%(95%信頼区間[CI]:60.2~78.7)であり、不完全なアウトカムデータに関する評価の一致率は80.0%(同:72.0~88.0)でいずれも「まあまあ」という信頼度であった。
さらに、割り付けの隠匿については48.4%(同:38.4~58.5)、アウトカム報告の選択は42.1%(同:32.2~52.0)、全体的なバイアスリスクについては54.7%(同:44.7~64.7)で、いずれも信頼度は「低い」という結果であった。
著者は結果を踏まえて、「既報のがん試験情報単独でのバイアスリスク評価は、信頼できない可能性があった。レビュワーは、それらを試験包含基準として、とくにリスクが不明である試験に用いることに慎重であるべきだろう」と述べている。そのうえで、「試験参加者からの補完的情報は適正な評価を可能とし、複数のバイアスリスクを減じるあるいは超越する可能性があると考えなくてはならない」と指摘し、さらに、「ガイダンスは、とくに主観的領域に関するバイアスリスクの構成に関して、もっと明快なものでなくてはならない」と提言した。
(武藤まき:医療ライター)