白人集団におけるゲノムワイド関連研究(GWAS)の結果、遺伝子座Toll様受容体(TLR)1と、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の血清疫学的有病率との関連が明らかになった。ドイツ・グライフスヴァルト大学のJulia Mayerle氏らが、2つの独立した集団コホートからなる計1万例について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2013年5月8日号で発表した。発展途上国では、H.pyloriの有病率が90%と高率だが、高頻度の曝露にもかかわらず残り10%の人には同感染が認められないことが明らかとなっていた。そのため、H.pyloriに対する感受性には遺伝的要因が関連しているとの仮説があり、研究グループは、GWASによってその特定を試みた。
2つのコホートでH.pylori血清有病率と関連する遺伝子座を分析
研究グループは、2つの独立したGWASとその後のメタ解析を行った。1997~2001年に開始された3,830例の集団コホート(Study of Health in Pomerania:SHIP)と、1990~1993年および2000~2001年の間に開始された7,108例の集団コホート(Rotterdam Study:RS-I、RS-II)を対象とし、血清中の抗
H.pylori IgGを調べ、
H.pylori血清有病率と関連する遺伝子座について分析した。
また、2006~2008年に開始された762例のコホート(RS-III)と、2008~2012年に開始された991例のコホート(SHIP-TREND)を対象に、全血RNA遺伝子発現様式について分析した。SHIP-TRENDの被験者961例については、便中
H.pylori抗原についても分析した。
便のH.pylori抗原価が高値の人はTLR1発現量が上位25%
対象者1万938例のうち56.3%(6,160例)に、
H.pyloriの血清学的陽性が認められた。
GWASによって、
H.pylori血清学的陽性と
TLR遺伝子座
4p14および
FCGR2A 1q23.3遺伝子座が関連していることを特定した(それぞれオッズ比:0.70、0.73)。また、
4p14遺伝子座の3種の
TLR遺伝子のうち、
TLR1のみが特異的に発現していることが確認された。
さらに、便の
H.pylori抗原価が高値(光学密度>1)だった人は、
TLR1発現量が上位25%に属していた(p=0.01)。
細胞外ドメインでAsn248Ser置換を持つ
TLR1は、rs10004195一塩基多型との強い関連が認められた。
同研究グループは、今後、非白人を対象にした試験でも
TLR1の遺伝性変異型と
H.pyloriとの関連が確認されれば、
H.pylori感染者のリスクの格差が
TLR1遺伝性変異型によって説明できる可能性があると結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)