重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者に対し、腹臥位治療を連続16時間以上行うと、仰臥位に比べ、28日死亡リスクはおよそ6割、90日死亡リスクは5割強、それぞれ減少することが報告された。フランス・リヨン大学のClaude Guerin氏らが、重度ARDS患者500例弱について行った、多施設共同無作為化比較試験PROSEVAの結果で、NEJM誌オンライン版2013年5月20日号で発表した。急性ARDS患者を含む先行研究においては、人工呼吸器装着中の腹臥位治療について転帰の改善は示されなかったという。
フランス・スペインのICU 27ヵ所、466例を対象に試験
PROSEVA(Proning Severe ARDS Patients)試験は、フランス26ヵ所、スペイン1ヵ所の集中治療室(ICU)を通じ、重症ARDSの患者466例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群(237例)には腹臥位治療を連続16時間行い、もう一方の群(229例)は仰臥位のままで治療を行った。
重症ARDSの定義は、動脈血酸素分圧(PaO
2)の吸入酸素濃度(FiO
2)に対する割合が150mmHg未満で、FiO
2が0.6以上、呼気終末陽圧(PEEP)が5cmH
2O以上、1回換気量が予測体重の6mL/kgに近い場合とした。
主要アウトカムは、試験開始から28日後までの全死因死亡率だった。
腹臥位治療で28日死亡リスクは0.39倍、90日死亡リスクは0.44倍に
その結果、仰臥位群の死亡率は32.8%だったのに対し、腹臥位群は16.0%と、有意に低率だった(ハザード比:0.39、95%信頼区間:0.25~0.63、p<0.001)。
補正前90日死亡率も、仰臥位群41.0%だったのに対し、腹臥位群では23.6%と、有意に低率だった(ハザード比:0.44、同:0.29~0.67、p<0.001)。
合併症発症率については、心停止が仰臥位群で有意に高率だったことを除き、両群で同程度だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)