スタチン薬について示唆されていた糖尿病の新規発症リスクについて、格差があることが明らかにされた。カナダ・トロント総合病院のAleesa A Carter氏らが、オンタリオ住民150万人以上の医療記録をベースとした研究の結果、プラバスタチン(商品名:メバロチンほか)と比較して、より効力の高いスタチン薬、とくにアトルバスタチン(同:リピトールほか)とシンバスタチン(同:リポバスほか)でリスクが高い可能性があることを報告した。BMJ誌オンライン版2013年5月23日号掲載の報告より。
解析対象47万1,250例、スタチン薬6種類の糖尿病発症リスクを調査
研究グループは、特定のスタチン使用と糖尿病発症との関連について調べるtime to event解析による住民ベースコホート研究を行った。糖尿病発症リスクに与えるスタチンの投与量および種類の影響について、ハザード比を算出して評価した。
対象は、オンタリオ住民で、1997年8月1日~2010年3月31日の間にスタチン治療を開始した糖尿病歴のない66歳以上の全患者とした。具体的には、解析には前年にスタチン処方がなかった新規処方患者が組み込まれ、治療開始前に糖尿病の診断が付いていた人は除外した。
被験者は47万1,250例で、そのうち心血管疾患の一次予防としてスタチン治療を受けていたのは48.3%、二次予防としては51.7%であった。治療開始時の年齢中央値は73歳、女性は54.1%であった。
全体の半数以上がアトルバスタチンを処方されており(26万8,254例)、次いでロスバスタチン(商品名:クレストール、7万6,774例)、シンバスタチン(7万5,829例)、プラバスタチン(3万8,470例)、フルバスタチン(同:ローコールほか)/ロバスタチン(国内未承認)(1万1,923例)であった。
解析では、プラバスタチンを参照薬とした。
プラバスタチンを参照薬に、リスクを増大するものとしないものに分かれる
解析の結果、プラバスタチンと比べてアトルバスタチン(補正後ハザード比:1.22、95%信頼区間[CI]:1.15~1.29)、ロスバスタチン(同:1.18、1.10~1.26)、シンバスタチン(同:1.10、1.04~1.17)で糖尿病発症リスクの増大がみられた。フルバスタチン(同:0.95、0.81~1.11)、ロバスタチン(同:0.99、0.86~1.14)では有意なリスクの増大はみられなかった。
糖尿病発症の絶対リスクは、1,000人・年当たりアトルバスタチンでは31件、ロスバスタチンは34件であった。シンバスタチンのリスクはわずかに低く同26件であった。参照薬のプラバスタチンは同23件であった。
解析の所見は、スタチン処方が心血管疾患の一次予防か二次予防かで異ならなかった。
また、スタチン薬を効力で分類した場合も同様の結果が示された。しかし、ロスバスタチン使用者の糖尿病発症リスクについて、有意ではないが用量依存の可能性が示唆された(同:1.01、0.94~1.09)。
(武藤まき:医療ライター)