軽度~中等度肥満の2型糖尿病患者について、生活習慣および薬物治療に加えて胃バイパス術を行うことで、目標血糖値・LDL-C・収縮期血圧がより達成可能であることが、米国・ミネソタ大学のSayeed Ikramuddin氏らによる無作為化試験の結果、示された。糖尿病患者にとって血糖・血圧・コレステロールのコントロールは重要であるが、そのベストな目標値達成方法は明らかになっていなかった。米国糖尿病学会の治療ガイドラインでも、直近の無作為化試験結果を踏まえて、胃バイパス術は推奨に見合わないものとされているという。JAMA誌2013年6月5日号掲載の報告より。
HbA1c値<7.0%、LDL-C値<100mg/dL、収縮期血圧<130mmHgの複合達成を評価
研究グループは、2型糖尿病患者のリスク因子である血糖・血圧・コレステロール値のコントロール達成について、胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass)と、生活習慣および強化薬物治療とを比較する無作為化試験を行った。
試験は米国と台湾の4つの教育病院で、2008年4月に開始され、12ヵ月間にわたって行われた。被験者は120例で、HbA1c値8.0%以上、BMI値30.0~39.9、血中Cペプチド値1.0ng/mL超で、2型糖尿病と診断されてから6ヵ月以上経過していた。
主要評価項目は、HbA1c値7.0%未満、LDL-C値100mg/dL未満、収縮期血圧130mmHg未満の複合達成とした。
胃バイパス術群の生活習慣・薬物治療群に対する達成オッズ比4.8
被験者は全員、生活習慣・薬物治療の強化療法を受けた後、60例が無作為に胃バイパス術群に割り付けられた。
12ヵ月後、主要エンドポイントを達成したのは、胃バイパス術群28例(49%、95%信頼区間[CI]:36~63)、生活習慣・薬物治療群は11例(19%、同:10~32)だった。オッズ比は4.8(95%CI:1.9~11.7)だった。
また、必要とした薬物が、胃バイパス術群は生活習慣・薬物治療群と比べて3分の1に減っていた(平均1.7対4.8、95%CI:2.3~3.6)。初期の体重減少率は、胃バイパス術群26.1%に対し生活習慣・薬物治療群は7.9%だった(格差:17.5%、95%CI:14.2~20.7)。
回帰分析の結果、複合エンドポイントの達成は主として体重減少に起因することが示された。
重篤な有害事象の発生は、胃バイパス術群で22例みられた。1例は心血管イベントだった。一方、生活習慣・薬物治療群は15例であった。なお、周術期合併症例は4例、術後に起きた合併症は6例だった。
胃バイパス術群は、生活習慣・薬物治療群よりも栄養不足の頻度が高かった。
以上を踏まえて著者は、「糖尿病のベストな生活習慣・薬物治療に胃バイパス術を追加する戦略はベネフィットがある可能性があり、重度有害イベントリスクに対して重視すべき戦略である」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)