食事に含まれる海産物由来のn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)の摂取量が増えるほど、乳がんリスクが低減することが、中国・浙江大学のJu-Sheng Zheng氏らの検討で示された。2008年の世界的ながん統計調査では、乳がんは全がん患者の23%、全がん死の14%を占めている。また、疫学研究では魚類やn-3 PUFAの摂取は乳がんの発症に対し予防的に働くことが示唆されているが、この知見と矛盾する観察試験の結果があるという。BMJ誌オンライン版2013年6月27日号掲載の報告。
魚類、n-3 PUFA摂取とリスクの関連をメタ解析で評価
研究グループは、魚類およびn-3 PUFAの摂取と乳がんのリスクの関連について検討し、摂取とリスクの用量反応関係を評価するために、前向きコホート試験の系統的レビューとメタ解析を行った。
医学文献データベースを検索し、2012年12月までに発表された論文とその関連文献から、魚類およびn-3 PUFAの摂取量やバイオマーカーに基づく乳がんの相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)の記載のあるものを選出した。
21件の前向きコホート試験に関する論文26編(乳がん患者:2万905例、参加者:88万3,585例)が解析の対象となった。米国と欧州の論文が11編ずつで、4編はアジアの試験であった。
n-3 PUFA最大摂取群でリスクが14%低下、魚類、αリノレン酸は関連せず
魚類摂取に関するものが11編(乳がん患者:1万3,323例、参加者:68万7,770例)、海産物由来のn-3 PUFA摂取が17編(同:1万6,178例、52万7,392例)で、12編(同:1万4,284例、40万5,592例)はαリノレン酸摂取についても検討していた。
n-3 PUFA摂取量が最も多い群は、最も少ない群に比べ乳がんの発症リスクが14%低く(RR:0.86、95%CI:0.78~0.94)、n-3 PUFAを食事(RR:0.85、95%CI:0.76~0.96)およびバイオマーカー(RR:0.86、95%CI:0.71~1.03)で評価した場合のRRは類似していた。
サブグループ解析では、n-3 PUFA摂取量と乳がんリスクの逆相関関係は、BMI未調整の試験(RR:0.74、0.64~0.86)のほうが、BMIで調整済みの試験(RR:0.90、0.80~1.01)に比べ、より明確に認められた。
摂取量とリスクの用量反応解析では、食事によるn-3 PUFA摂取量が0.1g/日増加するごとに乳がんリスクは5%低下し(RR:0.95、95%CI:0.90~1.00)、n-3 PUFAの1日の摂取エネルギーに占める割合が0.1%増加するごとにリスクが5%抑制された(RR:0.95、95%CI:0.90~1.00)。
魚類およびαリノレン酸の摂取と乳がんリスクには有意な関連は認めなかった。
著者は、「食事による海産物由来n-3 PUFAの摂取量が増えるに従って乳がんリスクが低減することが示された。魚類、αリノレン酸と乳がんリスクとの関連については、さらなる前向きコホート試験で確認すべきと考えられる」と結論し、「これらの知見は、食事やライフスタイル介入による乳がん予防に、公衆衛生上の有益な示唆を与えるもの」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)