低血糖の閾値を感知する機能が付いたインスリンポンプは、毎日複数回を要するインスリン注射に匹敵する血糖管理の利点を有するが、重篤な夜間低血糖リスクを有意に低下するかについては明らかではなかった。そこで米国・Park Nicollet国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏ら研究グループは、あらかじめ設定した血糖値でインスリン注入が一時的に停止する中断機能(最長2時間)を加えて、その有用性を検証する無作為化試験を行った。その結果、同機能を加えることで、夜間低血糖が有意に低下したことを報告した。NEJM誌オンライン版2013年6月22日号掲載の報告より。
インスリンポンプ中断機能あり群となし群で安全性、有効性を比較
閾値感知機能付きインスリンポンプについて、中断機能有無別にみた低血糖リスク低下の有用性を検証した多施設共同無作為化対照オープンラベル試験は、夜間低血糖記録のある1型糖尿病患者(適格条件:16~70歳、罹病期間2年以上、HbA1c値5.8~10.0%)を対象に行われた。試験期間は3ヵ月間だった。
被験者247例が無作為に、中断機能あり群(121例)と中断機能なし(対照)群(126例)に割り付けられた。主要安全性アウトカムは、HbA1c値の変化であり、主要有効性アウトカムは、平均曲線下面積(AUC)で評価した夜間低血糖イベント発生の有無であった。
インスリンポンプ中断機能あり群の平均感知血糖値は92.6±40.7mg/dL
主要安全性アウトカムは両群で同程度だった。
夜間低血糖イベントに関する平均AUCは、中断機能あり群(980±1,200mg/dL×分)が対照群(1,568±1,995mg/dL×分)より、有意に37.5%小さかった(p<0.001)。
夜間低血糖イベントの発生は、中断機能あり群(1.5±1.0回/患者・週)が対照群(2.2±1.3回/患者・週)より、有意に31.8%低かった(p<0.001)。
中断機能あり群の夜間血糖感知の割合は、50mg/dL未満で57.1%、50~60mg/dL未満で41.9%、60~70mg/dL未満は26.8%、それぞれ有意に低かった(いずれもp<0.001)。
夜間2時間のポンプ中断中に示された1,438例の感知血糖値の平均値は、92.6±40.7mg/dLだった。
試験期間中に重篤な低血糖イベントは4例で発生したが、すべて対照群だった。糖尿病性ケトアシドーシスを呈した被験者はいなかった。
(武藤まき:医療ライター)