米国・ハーバード公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らが、米国高齢者向け公的医療保険メディケアの高額医療費受給者について、予防可能な急性期医療サービスにかかる費用の占める割合を調べたところ、病院救急部門医療費では約4割、入院医療費では約1割と推定された。そのため著者は「外来医療サービスを充実しても、高齢者の高額医療費を削減するには限界があるようだ」と述べている。JAMA誌2013年6月26日号掲載の報告より。
メディケア高額受給者上位十分位群を特定し、予防可能な医療費の割合を算出
研究グループは、65歳以上でメディケア出来高払いプランの受給者111万4,469例の医療費について、未然に防ぐことができたと考えられる、病院の救急部門受診や急性期医療を受けるための入院分を調べた。
また、2009~2010年のメディケア支払いデータから、2010年のみ、または2009、2010年共に、高額受給者だった上位十分位群をそれぞれ特定。それら高額受給者について、予防可能な急性期医療サービスにかかるコストの割合を算出した。
高額受給者による病院救急部門医療費の41%、入院費用の9.6%が予防可能な医療費
高額受給者上位十分位群は、その他の非高額受給者上位十分位群と比べると、高齢で、男性、黒人が多く、共存症を有する患者が多かった。
2010年の病院救急部門に支払われた総医療費のうち、32.9%が同年の高額受給者上位十分位群によるものだった。こうした高額受給者上位十分位群による病院救急部門医療費のうち、予防可能だったものの割合は41.0%だった。一方で、高額受給者上位十分位群以外の人の同医療費のうち、予防可能だったのは42.6%だった。
また、高額受給者上位十分位群の医療費の、入院医療費全体に占める割合は79.0%で、そのうち予防可能な医療費は9.6%だった。高額受給者上位十分位群以外の人の予防可能な入院医療費は16.8%と推定された。
2009年、2010年共に高額受給者上位十分位群だった人の、病院救急部門の医療費のうち43.3%が、また入院医療費のうち13.5%が、それぞれ予防可能な医療費だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)